俳優を狙った「誘拐事件」が頻発か…タイ国境の“無法地帯”で消息を絶った「中国人俳優」が奇跡の生還
コロナ禍以降に被害者が急増
ジアジアさんのSNS投稿で公開された位置情報と地図から、王星さんが連れていかれたのは特殊詐欺の拠点「KK園区」の近くだったことがわかる。こうした詐欺拠点が東南アジアに集中している事実は広く知られており、具体的にはタイとカンボジアの国境、ミャンマーとタイ・中国・ラオスの国境あたりだ。中でもミャンマーのカレン州に位置する「KK園区」はひときわ悪名高い。
日本ではルフィ事件により海外の詐欺拠点に対する注目度が高まった。23年には東南アジア4カ国で8拠点が摘発され、日本人69人が移送・逮捕されている。最近では、昨年8月にカンボジアで保護された日本人12人が特殊詐欺の「かけ子」だったことが判明。「海外での高額報酬」をうたう求人広告に応募したところ、現地で待っていたのは詐欺集団というパターンだった。
こうした海外求人が大問題になったのは中華圏のほうが少し早い。コロナ禍の渡航制限が緩和された2022年夏頃から、香港や台湾などの政府機関に「家族が海外で多額の違約金を要求されて帰国できない」「音信不通になった」などの救助要請が相次いだ。外国人が東南アジアで働く際、契約に労動期間 と途中退職時の違約金が規定される場合があるが、特殊詐欺の拠点ではこの違約金が法外な金額なのだ。
さらには決死の覚悟で脱走した人たちが、不法拘束や拷問、恐喝、人身売買、用済みになれば臓器売買といった地獄を語った。この時に大きく報じられた詐欺拠点はカンボジアとミャンマーで、特に「KK園区」の悲惨さは人々を震え上がらせた。
報道と国際社会の圧力を受けたカンボジアは、22年9月に初の大規模摘発を実施。たった数日で約1500人もの外国人が解放され、その国籍はバングラデシュや中国内地、インド、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、ロシア、台湾、タイ、ベトナムなど様々だったという。他の場所でも救出作戦が行われ、中華圏のメディアはしばらく「生存者が語った地獄」「拠点から〇人救出」といったタイトルで一色になった。
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