俳優を狙った「誘拐事件」が頻発か…タイ国境の“無法地帯”で消息を絶った「中国人俳優」が奇跡の生還

国際

  • ブックマーク

「1月3日の正午頃、タイとミャンマーの国境で彼との連絡が途絶えた」――中国人俳優・王星さんのガールフレンドによるSNS投稿が、5日深夜の中国を驚愕させた。しかも、失踪した場所は多数の一般人が拉致され、地獄を見たという特殊詐欺の拠点近く。重大事件に発展しかねない状況から2日足らずで「無事発見」となったものの、新たな疑惑や議論が発生している。闇の深さを感じるその背景とは。

車でミャンマーとの国境へ運ばれて

 中国人俳優の王星さんは31歳。日本でも公開された映画「イップ・マン 継承」などに端役で出演したものの、主役級となるにはそろそろ大きなチャンスが必要な年齢だ。「タイで撮影がある」という告知に即応したのも、得意の英語でキャリアアップを願うがゆえだった。

 昨年12月24日、王星さんは俳優のグループチャットを介してキャスティングコーディネーターを自称する中国人の男と接触。動画でのオーディションに合格したが、撮影の詳細が明示されないことに疑問を抱き、30日に降板を申し出た。それでも強くタイへの渡航を迫られたことで男との関係の悪化を懸念し、英語を使うチャンスと気持ちを切り替えた。

 この経緯を把握していたガールフレンドのジアジアさんは、1月3日早朝にタイのスワンナプーム空港に到着した王星さんと絶えず連絡を取り合った。王星さんは男が手配した車に乗り込んだが、運転手は英語も中国語も話せないという。ジアジアさんが王星さんに位置情報を送らせたところ、車がミャンマーとの国境方面に向かっていることがわかった。

 空港を出てからおよそ6時間後の11時34分、「車を乗り換えた」というメッセージと現在地の画像が届いた。写っていたのは東南アジアの地方都市によくある未舗装の道路。その少し後にジアジアさんはチャット通話を試みたが、応答がなかったため、上海市公安局とタイの中国大使館などに連絡した。そのまま消息を掴めない状況が続いたことで、SNSでの緊急投稿を決断したという。

次ページ:コロナ禍以降に被害者が急増

前へ 1 2 3 4 次へ

[1/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。