利上げで住宅ローンの「繰り上げ返済額」が3倍に…プロが「おすすめしない」と断言する理由
今、住宅ローンの既存ユーザーの間で「繰り上げ返済」をする人がじわじわと増え始めているという。背景にあるのは、日銀の利上げ姿勢だ。昨年7月に0.25%へと引き上げられた政策金利は、今年さらなる引き上げが既定路線と言われている。
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大手ネット銀行で繰り上げ返済が増加
日銀の植田和男総裁も、1月6日の新年賀詞交歓会で「今年も経済・物価情勢の改善が続いていくのであれば、それに応じて政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していく」と発言するなど、“利上げ姿勢”を隠さない。こうした情勢を受け、「いまのうちに返しておこう」と考える住宅ローンユーザーが増えているというわけだ。
実際、昨年11月にネット銀行最速で住宅ローン残高額5兆円を突破した「auじぶん銀行」でも、繰り上げ返済が増加傾向だという。
「2023年10月と2024年10月とで比較すると、繰り上げ返済の実増加数は微増である一方、返済金額が約3倍に増加しています。金利の引き上げに危機感を抱かれた一部のお客様が、まとまった金額の繰り上げ返済を行っている傾向があります」(auじぶん銀行の担当者)
auじぶん銀行では、住宅ローン利用者の90%以上が変動金利を選択しているといい、それだけ金利の上り幅に敏感なユーザーが多そうだ。
しかし、こうした動きに専門家は首をかしげる。
「繰り上げ返済は、芥川龍之介の小説に出てくる極悪人カンダタが、地獄から這い出るのにようやく手にした“蜘蛛の糸”を、自らの手で切り落とす行為に等しいと言えます」
そう語気を強めるのは、住宅ローン比較診断サービスの「モゲチェック」を手掛ける、住宅ローンアナリストの塩澤崇氏である。
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