国家安全保障局トップ交代の背景にある「外務vs.警察」のポスト争い
石破首相の意向とも
国家安全保障局(NSS)の秋葉剛男局長(66)の交代が固まった。秋葉氏は2018年から外務次官を務めた後、2021年から現職に就いた。安倍・菅・岸田と続いた政権を外交面で支え続けた秋葉氏の退任の背景に、過去の外交路線とは一線を引こうとする石破茂首相の存在をあげる永田町関係者もいるというが、実際のところはどういった理由によるものだろうか。
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国家安全保障局長は日本の外交・安全保障政策を取り仕切る国家安全保障会議の事務局を統括する立場だ。現職の秋葉氏で3代目。初代の谷内正太郎氏が2014年1月から19年9月まで、2代目の北村滋氏が2019年9月から21年7月まで、その後を秋葉氏が務めてきた。
「外務次官から間を置かずに国家安全保障局の局長に就いた秋葉氏は早くから外務省内で次官候補と目されていました。実際に次官となり3年5ヶ月在職しました。これは戦後最長ですね」
と、政治部デスク。
2代目のみ警察庁出身
「初代の谷内氏も外務次官を異例の3年にわたって務めた人物です。国家安全保障局長は緊急事態に対応する内閣危機管理監と同じクラスの待遇であり、大物次官級が就くポストだというのは間違いないでしょう」(同)
初代と3代目が外務省出身者であるのに対し、2代目の北村氏は警察庁出身だ。
「警察庁では早い段階から長官・警視総監候補と見られてきました。外事畑を進み、総括審議官を務めた後に内閣情報官に起用されました。民主党政権時代のことです。政権交代後も留任し、戦後最長となった安倍政権を支えました。内閣情報官は内閣情報調査室のトップで国内外のありとあらゆる情報を収集・精査する役割を担っています。北村氏は官邸に日参し、当時の安倍首相と連日面会していることが首相動静欄からも明らかになり、安倍氏の重用ぶりを物語っていましたね。“官邸には目立たないように入るやり方があるのにパフォーマンスでしょう”と嫌味を言う人もいましたが、北村氏は意に介さなかったようですね」(同)
条件とは
「北村氏は完全なワーカホリックで、とにかく仕事の鬼だったそうです。周囲の評価には耳を貸さず、仕事で結果を出すというスタンスだったのでしょう。部下に求めるレベルも高く、北村氏が関与する組織は良い意味で鍛えられたのではないでしょうか(笑)」(同)
北村氏が“悪目立ち”したことに限らないが、安倍・菅・岸田政権下で警察キャリアが特に出世・栄達を重ねたことに対して霞が関官僚らの反発があったことは事実のようだ。そのことは今回の国家安全保障局長人事とも無縁ではない。
「秋葉氏の退任理由は本人からの“辞めたい”との申し出があったからです。レク(説明)の場ではしんどそうな表情を浮かべていたこともありました。何しろタフな職場ですから、本人も体力的な限界を悟っていたのでしょう。秋葉氏は退任にあたって条件をつけていて、“警察側にトップを明け渡さない、外務省出身者を継続して起用してもらえたらありがたい”というものでした」(同)
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