トランプ次期政権の足かせは「イーロン・マスク大統領」か…国民のプライバシーを軽視する「シリコンバレー発の政治哲学」

国際

  • ブックマーク

MAGA支持者の怒りがトランプ氏に向かえば……

 マスク氏が信奉するとされる「テクノ・リバタリアニズム」という政治哲学も要注意だ。リバタリアニズム(自由至上主義)をハイテクによって実現しようとするシリコンバレー発の思想で、日本ではあまり知られていない。

 規制緩和を訴えるトランプ氏に2016年頃から接近していた彼らが、マスク氏のおかげで、ついに政権の中枢に影響力を及ぼせるようになった形だ。

 気がかりなのは、彼らが草の根ベースの民主主義に関心がないことだ。目標はあくまで強力なテクノロジーを独占する彼らに究極の自由が約束された社会の実現であり、国民のプライバシーなどお構いなしだとのスタンスをとっているからだ。

 MAGA支持者は「トランプ氏の復活ですばらしい新世界が始まった」と夢を見ているだろうが、米国の未来はオルダス・ハクスリーが1932年に発表したディストピア小説『すばらしい新世界』で描写したような、ほとんどの国民が自らの尊厳を見失ってしまう社会になってしまうのかもしれない。

 期待を裏切られたMAGA支持者の怒りがトランプ氏本人に向かえば、米国は未曾有の大混乱に陥ってしまうのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。