開戦からまもなく3年…戦略的見地では「ロシアの大敗北」と言える理由 兵士の練度は低く、戦車は“敵に背を向けて遁走”の目を覆う実態

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代償と釣り合わない戦果

「最前線だけに注目すれば、ウクライナ軍はロシア軍と北朝鮮軍に敗北を重ねています。しかし緒戦を思い出してください。2022年2月、ロシア軍はウクライナを急襲しました。首都のキーウには空挺部隊が降下、ゼレンスキー大統領の脱出路を断って全土の完全占領を目論んだのですが、ロシア軍は敗北を重ねてクリミア半島に退却しました。昨年から東部戦線で猛攻を続け、徐々に占領地域を増やしてはいます。しかし戦車や兵士を大量に失う犠牲を出しても、得た戦果はウクライナの僅かな“大地”です。どれほど大きく見積もっても、ウクライナ全土の3割とか2割でしょう。ロシア軍の代償とは全く釣り合っていません」(同・軍事ジャーナリスト)

 Forbes JAPANは1月1日、「クルスク反攻のロシア軍主力部隊に壊滅的損害か 第810海軍歩兵旅団が前線離脱」との記事を配信した。

《ロシア側は総勢6万人規模とウクライナ側(2万人規模)の3倍のマンパワー(人的戦力)を擁し、さらに1万2000人にのぼる北朝鮮軍の支援も受けていながら、これまでのところ突出部を4分の1ほどしか奪還できていない》

 作戦・戦術面のレベルでも、ロシア軍はウクライナ軍に勝利したとは言えない。これが戦略面となると、ロシアの敗北は明らかだという。

ロシアの“封じこめ”は進行中

「昨年12月、シリアのアサド政権が崩壊しました。その理由の一つとして、ロシアがウクライナ戦争で手一杯となり、充分な支援ができなかったことが挙げられます。ロシアは中東における重要な友好国を失い、黒海艦隊は黒海や地中海を自由に行き来することができなくなっています。さらに振り返れば2022年、中立政策を堅持してきたスウェーデンが方針を転換し、フィンランドと共にNATO加盟を申請しました。これはロシアにとって外交・軍事面の大敗北と言えます」(同・軍事ジャーナリスト)

 結果、バルト海と黒海がNATOのものとなり、海や空からロシアに圧力をかけることが可能になった。

「世界地図をひと目見ただけで、ロシアの封じこめが着実に進行していることが分かります。ロシアのウクライナ侵攻は国益の観点からは完全な失敗に終わったことは明白です。ロシアのメンツを考えれば、いきなり和平交渉のテーブルに付くのは無理かもしれません。しかし、もしプーチン大統領にまともな判断力があるのなら、和平交渉はメンツの観点から難しくても、ロシアが今年から停戦交渉を模索しても全く不思議ではないと思います」(同・軍事ジャーナリスト)

 関連記事【ロシア派遣の「北朝鮮兵」が味方を“誤射”も専門家は「当然の結果」…言葉の壁だけではない共同戦線を崩壊させる「3つの重大要素」とは】では、ウクライナ戦線に北朝鮮軍が加わったことで生じたロシア軍の“誤算”について報じている。

デイリー新潮編集部

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