なぜ“嫌韓”はネットから消えたのか…一瞬にして潮目を変えた“世界的な大難”とは

国際 韓国・北朝鮮

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韓国の話題を出しておけば

 筆者は2006年からネットニュースの編集をしてきたが、2019年まで、炎上をしたりケンカが発生したりする話題の最たるものは韓国に関するものだった。とにかく韓国ネタを出しておけば、アクセス数が稼げ、SNSでも多数シェアされた。題材は何だっていい。政治・経済に限らず、K-POPの方がレベルが高い、やら、日本の方が野球が強い、とかでもいい。だもんだから、ニュースサイト運営者の側からすれば韓国ネタは鉄板であった。そしてアクセス数を稼ぎたいときや、話題がなく困ったときは韓国ネタに頼った。

 何しろ、韓国をホメれば親韓的な人が喜び我々の記事を紹介してくれ、嫌韓的な人はイヤなものをわざわざ読んでくれたうえで、「この反日メディアが! けしからん!」とキレて我々の記事を紹介してくれるのである。反対に、韓国にとってネガティブなネタを出すと嫌韓派が鬼の首を取ったかのように記事を紹介した。

 無料のコンテンツが多いネットならではの現象だが、我々サイトの運営側としては、どちらに肩入れするということはなく、とにかく韓国の話題を出しておけばある程度の収益を稼げるという算段があったのである。何しろ韓国関連の記事を出せば、勝手に両派がリンクを貼ってくれ、盛り上がってくれるのだから。

耐えがたいもの

 ネットでの盛り上がりはリアル世界にも波及した。2011年の紅白歌合戦に、少女時代、KARA、東方神起の3組が出場したところ、「韓流紅白をぶっ潰せ」とばかりに開催中のNHKホール前でデモが発生。彼らは日本のメディアが韓国に乗っ取られたという被害者意識を持ち、「国士」としての義憤を大晦日の寒空の下で示したのである。

 ここから先、李明博大統領が竹島に上陸したり、朴槿恵大統領が安倍晋三首相につれない態度を取ったり、日本の過去の「悪事」について「告げ口外交」をする度に日本のネットは燃え上がった。そして、親・北朝鮮の文在寅政権が徹底的に反日的姿勢を示すと嫌韓派は連日のように燃料を投下され、ネットで怒りを表明し続けた。

 朝日新聞が捏造を認めた従軍慰安婦問題、徴用工問題、韓国軍による自衛隊哨戒機に対するレーダー照射問題など、2010年代中盤~後半のネット上は韓国話題が本当に連日のように盛り上がっていた。いわゆる「少女像」を釜山の日本領事館の前に作ったり、毎週水曜日にソウルの日本大使館前で抗議デモをしたりする韓国人の姿も一部日本人にとっては耐えがたいものだった。

お茶さえない殺風景な部屋で

 その流れが変わったのは2019年夏のことである。経済産業省が、韓国を「ホワイト国」から除外する政令を施行したのだ。半導体製造等に使われる日本の高水準のフッ化水素等の輸出に関し、手続きを厳格化することに。それまで韓国は信頼に値する、と考えられていたのだが、核兵器製造に転用できる戦略物資が行方不明であることが明らかになった。これについて、韓国政府から説明がなかったことが理由である。つまり、日本発の工業製品が北朝鮮を含めた核開発国に韓国により渡されていたとの疑念が持たれたのだ。

 半導体製造が重要国策である韓国にとってホワイト国からの除外は大問題。そこで日本の経産省での会談に臨んだのだが、その時の韓国の官僚に対する扱いが嫌韓派からは拍手喝采だった。ニュース記事に登場した1枚の写真が話題を呼んだのだが、左側にはワイシャツ姿の経産省職員が2人、テーブルを挟んで右側にはスーツ姿の韓国産業通称資源省職員が2人。両者とも厳しい表情だ。

 その後ろにあるホワイトボードには赤いマグネットで付着された「輸出管理に関する事務的説明会」と書かれた紙が貼られている。殺風景な物置のような部屋である。応接室ではまったくないし、お茶さえ置かれていない。この写真が嫌韓派からは絶賛された。「よくぞ経産省はここまで見下した態度を取れたものだ!」と。

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