「大谷翔平超え」の巨額契約で面目躍如…一人でメジャーの勢力図を塗り替えた「スゴ腕代理人」の交渉術とは

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代理人の腕次第で

 代理人が大金を生み出し、来季のペナントレースの行方まで決めてしまう。これも米FA市場の特徴だが、今オフは違う意味で「ボラス氏の交渉の行方」に注目が集まっていたという。

「見どころの一つは、『大谷超え』です。それまでメジャーリーガーの大型契約と言えば、良くも悪くも、ボラス氏でした。昨年オフ、大谷が『10年7億ドル(約1014億円/当時)』の超大型契約をドジャースと結び、プロスポーツ史上最高額となりました。ソトの若さも鑑みれば、それを塗り替えるのは必至。さらに、ボラス氏がどこまで釣り上げてくるのか、注目されていたのです」(前出・米国人ライター)

 ボラス氏個人にとっても今オフは、メンツの掛かった大勝負が続いていたようだ。というのも、「大型契約」で大谷の代理人のネズ・バレロ氏(61)がナンバー1になった昨年オフ、ボラス氏は大失態をおかしている。

 ドジャースは大谷獲得に名乗りを挙げた直後、DHのレギュラーを務めたJ.D.マルティネス(37)をリリースした。マルティネスの代理人はボラス氏。もともとの契約は1年ではあったが、本塁打33、打点103と活躍していたので「新天地もすぐに見つかるだろう」というのが大方の予想だった。

「ジャイアンツが早々に名乗りを挙げました。提示額は1年1400万ドル(約18億2000万円/当時)。でも、ボラス氏は2000万ドル(約26億円)を譲らず、交渉は難航しました。何回目かの交渉後、ジャイアンツはマルティネスと同じタイプであるホルヘ・ソレア(32)と3年4200万ドル(約58億8000万円)で契約してしまったんです。結局、マルティネスの移籍先が見つかったのは開幕戦直前の3月下旬。移籍先であるメッツがマルティネスに提示したのは1年1200万ドルでした」(前出・同)

 23年、ドジャースから支払われた年俸は1000万ドル。「ジャイアンツの提示額を受け入れていれば」というのが米野球ファンの感想だったが、ソトの契約でリベンジを果たしたとも言える。一方で、こんな“しくじり”も。

「同じく23年オフ、カブスのコーディ・ベリンジャー(29)が残留を希望していました。ベリンジャーはドジャースでDFA(戦力外)となり、カブスで復調できたので、相思相愛でした。でも、彼の代理人であるボラス氏は大型契約を目指し、交渉が長期化してしまいました」(前出・同)

 その途中で、ボラス氏は「オーナーと交渉したい」と言い出した。カブスのトム・リゲッツオーナーは「直接オーナーと交渉したら、ゼネラルマネージャーの立場がなくなる」と一蹴した。オーナーと会う、会わないというやり取りも交渉長期化の原因となった。結果、ベリンジャーは残留したが、23年オフのボラス氏は打つ手の全てが裏目に出てしまったわけだ。

「強気の交渉でも有名な代理人です。代理人の取り分は契約の規模で多少異なりますが、だいたい5%ほどで、テレビCMなどの副業で10~20パーセントと言われています。契約金が上がれば代理人の取り分も多くなるので、ボラス氏の強気な交渉に批判的なファンもいますが、一方で球場での人種差別的な汚い野次をなくすキャンペーンを行うなどの一面も持っています」(前出・現地記者)

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