欧米の高級紙がトランプ氏を「ヒトラーの再来」と報じる理由…ウクライナ情勢は何が起きても不思議ではない『不確実性の時代』に突入

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 2022年2月24日の午前6時、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は国営テレビで緊急演説を行った。そこで彼は「ウクライナ東部で集団殺害が起きている」と一方的に断言。武装集団の支配地域に住む市民を保護するため「軍の特殊作戦を実施する」と表明した。たちまちロシア軍は国境を越え、雪崩を打つようにウクライナへ侵略を開始した。

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 ロシア軍は100発以上のミサイルをウクライナ各地に発射し、陸軍が北部、東部、南部の3方向から首都のキーウに向かって進軍を開始した。さらにキーウ郊外のアントノフ国際空港を空挺部隊が強襲し、一気に首都陥落を目論んだ。

 誰もがロシア軍が勝利すると考えていた。欧米各国はウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に亡命をアドバイスした。だが土壇場でウクライナは持ちこたえる。緒戦ではウクライナ軍だけでなく、一般市民も武器を手に取ってロシア軍を撃退した。担当記者が言う。

「アメリカの3大ネットワークは、ウクライナの一般市民にもバズーカ砲や自動小銃が手渡され、個人所有の4WDに乗って最前線に向かうという緊迫した映像を流し、視聴者に強い衝撃を与えました。ウクライナ国民は一丸となってロシア軍の猛攻を食い止めて押し返し、翌23年6月には反攻作戦を開始します。しかし防御を固めていたロシア軍に撃退され、今度はウクライナ軍が敗走する結果に終わりました」

 昨年は年頭からロシア軍が東部戦線で猛攻を開始してウクライナ軍は苦戦する。8月には劣勢を跳ね返そうと越境攻撃に踏み切り、ロシアの西部クルスク州を奇襲したが、こちらは何と北朝鮮軍が援軍として参戦。人海戦術で甚大な被害を出しながらもウクライナ軍を押し戻している。

独ソ不可侵条約の教訓

 今年の2月24日を迎えると、ウクライナ侵略戦争は開戦から丸3年が経過したことになる。1月20日にはドナルド・トランプ氏が第47代のアメリカ大統領に就任する予定だ。彼は以前からウクライナとロシアの停戦を主張しており、「就任前」か「就任後24時間以内」に実現させると豪語してきた。

 ウクライナ侵略戦争は今年、果たしてどのような情勢となるのか、トランプ氏は本当に停戦を実現させるのだろうか──。

 防衛大学校の佐瀬昌盛名誉教授は、東京大学教養学部から大学院に進み、ドイツのベルリン自由大学で学んだ。東西冷戦の第一人者であり、東欧とロシアに精通する佐瀬氏に見通しを訊いた。

「インターネットで『トランプ ヒトラー』と検索すると、両者の共通点を指摘した多くの新聞記事が表示されます。それもアメリカのニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、イギリスのガーディアン、スイスの新チューリヒ新聞など、欧米の高級紙が精力的に報じていることが分かるのです。そして現在のウクライナ情勢を鑑みながらアドルフ・ヒトラーの人生を振り返ると、私は1939年に締結された独ソ不可侵条約に注目すべきだと考えます」

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