戒厳令、大統領を弾劾、そして逮捕状……政治不安でウォン安の恐怖に直面する韓国
「我々に民主主義は無理」
――この声は泥沼で戦う政治家に届くでしょうか?
鈴置:届くのは容易ではありません。勝てば権力を握れるけれど、負ければ牢獄に送られるのです。ウォンが売られまくって通貨危機に陥ろうと、それは「政敵のせい」なのです。
憲法裁判所の裁判官任命に関しては昨年末、当時の大統領代行だった韓悳洙(ハン・ドクス)首相が拒否したことがあります。これに怒った野党が首相も弾劾したのですが、大統領と首相の相次ぐ弾劾訴追に嫌気して株も為替も下がりました。
すると野党第1党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表がすかさず「株安もウォン安も韓悳洙首相のせいだ」と非難しました。
1987年までのいわゆる軍事独裁時代、韓国人に「新聞を検閲するなんて、共産圏と同じではないか」と聞いたみたことがあります。多くの人の答は「妥協のできない韓国人には日本のような民主主義は無理。強い力で引っ張っていくしかない」でした。
韓国の民主主義のもろさに関しては『韓国消滅』第2章第2節「半導体を作る李朝」をお読みください。見出しからも分かるように、分裂の激しさは李朝以来の宿瘂なのです。
[3/3ページ]