「7割がジェネリックに」 年間47兆円の医療費削減がわれわれに及ぼす影響とは
3000万円の注射
「私の家内は脳出血で倒れたことがあります。脳出血で倒れると1カ月は入院が必要になるので、軽く100万円はかかってきます。このときは高額療養費制度を利用しました」
と、北村氏が述懐する。
「やはり大きな手術が必要な場合、経済的負担が重くなりますので、そこで使われるイメージです。心筋梗塞やがん治療でも利用されています。最近だと、認知症の治療薬も高額ですので、高額療養費制度の対象になることはあり得ると思います」
先の秋津院長によると、
「白血病の注射(キムリア)は1本3000万円以上します。それが1回の治療です。この場合、必然的に高額療養費制度を使うことになるわけで、ほとんどが国の負担です。当然、それでは医療財政はパンクしてしまう。高額療養費制度の限度額引き上げにはそうした背景もあるのです」
高額療養費制度には「多数回該当」という仕組みもある。過去12カ月以内に3回以上、自己負担の上限額に達した場合、4回目から「多数回該当」となり、上限額が下がるのだ。例えば年収約370万~770万円の人の自己負担の上限額は先述の通り〈8万100円+(医療費-26万7000円)×1%〉。多数回該当になると、4回目からは上限額が4万4400円になる。
「がんで長期間治療している人は多数回該当になる場合があるかもしれません」
と、秋津院長。
「例えば、肺がん治療によく使われるアリムタは1本約10万円で、1カ月に1回の投与を継続しなければなりません。他の点滴を打つ場合もありますから、長期にわたって高額療養費制度の自己負担限度額に達する可能性があると思います」
他にも、
「リウマチの治療をしている場合も多数回該当になる人がいるかもしれません。免疫抑制剤であるJAK阻害剤のオルミエントは1錠約5000円で、1日1錠を何年も飲み続けなければなりません。他の薬も組み合わせて飲む場合もあるので、人によっては高額療養費制度適用となるでしょう」
「世帯合算」という仕組みもある。厚労省はHPで次のように説明している。
〈おひとり1回分の窓口負担では上限額を超えない場合でも、複数の受診や、同じ世帯にいる他の方(同じ医療保険に加入している方に限ります。)の受診について、窓口でそれぞれお支払いいただいた自己負担額を1か月単位で合算することができます。その合算額が一定額を超えたときは、超えた分を高額療養費として支給します〉
70歳以上の場合、全ての自己負担分が合算されるが、70歳未満の場合、2万1000円以上の自己負担のみが合算される。
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