「7割がジェネリックに」 年間47兆円の医療費削減がわれわれに及ぼす影響とは
薬が不足する悪循環
ジェネリックに関しては去る11月21日、共同通信が、
〈後発薬4割、承認書と異なる製造 業界自主点検に「衝撃的」〉
という見出しの記事を配信している。
「製造を許可してもらうために出す製造販売承認書と、実際の製造過程が違っていた後発薬が4割もあった、という内容の記事です。こうした問題の根本には、より安く製造しなければならないという製薬会社の窮状があります。薄利多売にするため、製造工程を変えてしまったということがないとはいえません」
そう解説するのは、医薬情報研究所(株)SICの医薬情報部門責任者で薬剤師の堀美智子氏だ。
「ジェネリックを巡っては、製造工程で別の薬の成分が混入するなどの不祥事が相次ぎ、業務停止命令などの行政処分を受けるという騒動があったばかりです。そのせいでメーカーが少なくなり、薬が足らなくなっている、という悪循環に陥っています。先発品でもジェネリックでも個人の体質などによる差もあり、効果や副作用の有無を判断するのは難しい。結局、飲んでみて自分に合うかどうかを見極めるしかありません」
保険診療にかかった医療費の総額である国民医療費は22年度に過去最高の46.6兆円を記録。来年には800万人ほどの「団塊の世代」が全員75歳以上の後期高齢者となることもあり、医療費の削減は“待ったなし”の状況にある。「特別の料金」を徴収してまでジェネリックへの転換を促すのもその一環だ。
また、医療費の患者負担に月ごとの限度を設けた「高額療養費制度」も今後、改変されることになりそうだ。無論、医療費抑制の方向、つまり、われわれにとっては「負担増」となる。
〈高額療養費上限、年内結論へ 厚労省、引き上げ幅を議論〉
11月22日付朝日新聞朝刊に掲載された記事は次のように伝えている。
〈厚労省は水面下で、2025年夏に上限を引き上げ、26年夏に所得区分を細分化する2段階の実施案を考えている。第1段階では、70歳未満の場合、所得区分が真ん中の層(年収約370万~約770万円)で5400円引き上げることなどを検討〉
そもそもどのような制度なのか
そもそも高額療養費制度とはいかなるものなのか。
「ひと月にかかる医療費の自己負担額が一定額を超えた場合、その超えた分を償還払いする制度です」
と、社会保険労務士の北村庄吾氏が解説する。
「1973年にこの制度が創設された時点では、医療費の自己負担分が月額3万円を超えた時に、後で請求すると償還払いで返ってきました。例えば、手術代で月に100万円の医療費がかかると、自分で支払うのは3割負担として30万円。創設当時の限度額3万円で考えると、27万円が事後的に戻ってくるわけです」
創設当時の意図としては、
「突然の事故や、がん・白血病といった大病の手術については、自己負担が3割であっても家計負担が非常に重くなってしまうので、それを軽減することが目的でした。しかし、現在は慢性的な疾患に対する高額な治療の選択肢が保険診療でも増えているので、昔に比べると利用するケースは増えていると思います」(同)
元々は一定の額を超えたら償還される、という単純な仕組みだったが、その後、限度額の引き上げにともなって制度が改正された。
厚労省のHPに掲載された説明では、70歳未満で年収約370万~約770万円の人に100万円の医療費がかかった場合の自己負担限度額は、次のような計算式によって算出するという。
〈8万100円+(100万円-26万7000円)×1%=8万7430円〉
頭がクラクラしそうだが、この制度の根幹を理解するにはこの計算式の意味も把握しておく必要があろう。
「まず8万100円がどこからきたのかを考える必要があります。この年収区分の方の月額の報酬は32万円ほど。医療費が報酬の25%くらいになるところを便宜的に“限度”として線引きし、はじき出したのが8万100円ということになります」(同)
3割の自己負担分が8万100円の場合、医療費(10割)は26万7000円となる。実際にかかった医療費100万円のうち、その26万7000円を超えた分は1%に軽減しようということで(100万円-26万7000円)×1%。それに8万100円を足したものが自己負担限度額となる。
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