「デジタルの時代だからこそ、“感性”が重要」…「東京スポーツ」平鍋幸治社長が語る、「ネット時代に守りたい“東スポ文化”」とは
「最後は感性」
ネットによる記事の均質化、それに伴ってインパクトが薄れることは私のようなライターにとっても頭の痛い問題である。私の東スポの連載コラム「赤ペン!!」から一例を挙げよう。今季DeNAが広島に負け越した際に書いた記事は、東スポWEBでは試合中の三浦大輔監督の写真が添えられたごく普通のレイアウトだった。ところが、紙のほうでは三浦監督の頭上に巨大な錦鯉がいて、三浦監督をパクパクと食べているコラージュ写真に変わっている。このように読者を惹きつけ、思わず吹き出してしまう見せ方は紙、それも東スポにしかできない。平鍋社長もうなずいて言う。
「やっぱり、大事なのはそういう感性ですよね。僕、きょうも会議で(社員の)みんなに言ったんですよ。『データや数字も大事だけど、取材するのも、記事を書くのも、紙面を作るのも、一番大事なのは感性だ』と。阪神の岡田(彰布)前監督も仰っていたように、『最後は感性』なんです。例えば、ごく基本的なことですけど、現場で取材対象者を捕まえて話を聞くことひとつ取っても、タイミングや質問の仕方を間違えたら、うぜえな、あっち行けって言われちゃうし、ピシャリとハマれば面白い話が聞ける。そういう感性を磨くにはどんどん現場に出て行かなきゃいけない。ネットの時代だからこそ、デジタル化されればされるほど、余計に人としての感性が重要になってくる。ウチに入ってくる若い人にも、その感性を身につけてほしいですね」
東スポテイストは壊せない
日刊ゲンダイの寺田社長は、「昔のように午前中の発生ニュースを伝える夕刊紙の役割は終わっている」と言っていた。夕刊紙という概念そのものが過去の遺物と言ってもいい。そういう時代に、東スポの平鍋社長はどのような未来図を描いているのか。
「いずれは朝刊になるんじゃないですか。コロナのおかげで、サラリーマンの生活スタイルがガラリと変わったでしょう。紙しかなかった昔は、サラリーマンは朝から会社に行き、仕事帰りに酒をあおって、電車に揺られながら夕刊紙を読んでいた。それがネットの普及もあって、リモートでも仕事ができるようになり、朝刊が昔のような朝刊としての役割を果たさなくなってる。かつてのような“夕刊紙文化”ももうなくなってるんですよ。そういう時代だからこそ、東スポという文化を守っていかなきゃいけない。朝出そうが昼出そうが、夕方出そうが夜出そうが、東スポは東スポなんです。この東スポテイストは絶対に壊せない。朝からUFOや宇宙人がやってくるような新聞があってもいいでしょう。ゲンダイさんのあのテイストも、朝からああいう新聞が来たら面白いと思いますよ(笑)」
夕刊紙は死すとも、東スポ、ゲンダイは死せず。
【前編】では、大成功を収めた「東スポ餃子」の誕生秘話を語っている。