「デジタルの時代だからこそ、“感性”が重要」…「東京スポーツ」平鍋幸治社長が語る、「ネット時代に守りたい“東スポ文化”」とは
世界一の馬柱
ネット時代、スマホ社会の今、競馬が紙の売り上げに役立つと平鍋社長が考えた根拠は何なのだろう。
「よく言われますよね、今の新聞はいずれなくなって、ウェブだけになるとか。いや、そうじゃないでしょう。僕がそう思うのは、競馬面の馬柱があるからこそです。あれは本当に世界一よくできてる。こんなに細かい馬柱が並んでいて、あの箱にいろんな情報が入ってる。世界中の新聞やメディアを探しても、あれほどの情報源になるものは日本だけですよ。だから、競馬場に行ってみると、20~30代のファンでも、やっぱり馬柱の紙を持ってる。そういう読者がまだまだ多い。なんでかって言うと、紙はエンピツやボールペンで書き込めるから。スマホでも出走表は見られますけど、書き込めないじゃないですか。スマホで見て頭に入れて、2-4買おうかなとか考えることはできますけど、それででっかいの当てたって話はあまり聞かない。やっぱり、紙は枠全体を見られるから、(出走馬の)並びだとか、その紙に自分で○や◎を書き込んで、おカネをかけて一喜一憂するわけでしょう。そういう文化はこの先も残ると思うんです。実際、大きなレースが行われる週末は、20代でも紙を買う人がいる。30代以上になると、紙の読者がもっと結構な数になる。40、50、60代は当然、紙がほとんど。そういう読者の年齢層からして、まだ20~30年ぐらい“週末の紙文化”は残るんじゃないかな。もちろん、スマホで予想する人も増えてはいます。全体の(読者の)パイが徐々に小さくなっていくのは避けられないでしょうけど」
紙よりも早くネットに
日刊ゲンダイの「日刊ゲンダイDIGITAL」と同様に、東スポも「東スポWEB」を立ち上げ、アクセス数を増やそうと力を入れている。私が寄稿しているプロ野球の拙文も、紙よりも早くネットにアップされたり、時にはネットオリジナルとして扱われたりすることが増えた。しかし、売り上げはまだ紙のほうがウェブよりも上だ。それは日刊ゲンダイも東スポも変わらない。平鍋社長は両手で大きな円を描き、「これが紙の売り上げ」とすると、大きな円の何分の一かの小さな円を指で描いて、「ウェブの売り上げはこのくらい」と指摘した。
「それだけ紙の売り上げのほうが大きくても、利益率から言うと、ちょっとは黒字になったかな、いや、まだ赤字かな、というぐらいです。紙はやっぱり、紙代も輸送コストもかかる。その点、経費のかからないネットのほうが確実に利益が出ますから。でも、毎日のトップニュース、きょうのでかいニュースはこれだって、一目でわかるのは紙じゃないですか。ゲンダイさんの1面なら『石破降ろしが始まった』と書かれたりとか、ウチの1面なら野球や芸能ネタで大きな見出しを掲げたりとか。それが(大手プロバイダーの)スマホのアプリやポータルサイトだと、ニュースの大小にかかわらず、新聞で言う雑感記事やベタ記事みたいに横並びで出されてしまう。アレもどうなのかなあ」
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