大人気の樹木葬墓、散骨には注意点が… 費用とメリット・デメリットが分かる「最新お墓ガイド」

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個人での散骨はお勧めできない

「散骨」という言葉から、骨をまくだけでよく、個人で“手軽”にできるというイメージを持つ方もいることでしょう。しかし、砕骨をしたり、海洋に出るために船を出す必要があることを考えると、個人で散骨するのはお勧めできません。インターネットなどで調べて、専門業者に依頼するのがよいでしょう。

 代理散骨を業者にお願いした場合の費用は、5万~15万円程度が相場です。肝心なことですが、一度まいた骨は二度と戻ってこないことを忘れないでください。実際には、全ての遺骨をまくのではなく、一部だけを散骨し、残りは別の形で弔う方も多く、「遺骨を全部散骨しておしまい」と決断できる人はまだそう多くはない印象です。

 他には、「手元供養」という選択肢もあります。亡くなった人の遺骨を、残された方の自宅、つまり手元に安置しておく弔い方です。法律的には全く問題がありませんし、家に置く分には費用はかかりません。

 メリットとして、いつでも遺骨に手を合わせられることが挙げられます。しかし、永遠に手元供養を続ける方はまずいません。

 なぜなら、遺骨を納めることができるのは、法律で「墓地、納骨堂として認められた場所」であり、どこかのタイミングで「納める」行為を行わないと放置され続けてしまうからです。大切に思っているからこそ、タイミングを見計らってお墓に納めるか、散骨などで遺骨の行き場所を考える人が多いようです。やはり、手元供養は一時的な措置であり、いつかは何らかのお墓を選択することになるでしょう。

「0葬」とは?

 究極的な方法として、火葬場に遺骨の全てを処分してもらい、一切持ち帰らない「0葬(ゼロ葬)」というスタイルもあるにはあります。骨壺すら不要で、まさに手間はゼロです。しかし、遺骨の全ての処分を引き受けてくれる火葬場は少なく、さすがにこのスタイルはあまり広がっていないようです。

 これまで見てきたように、お墓のあり方は多様化しています。その分、事実上、選択肢が従来型のお墓に限られていた時代に比べ、どのようなお墓、弔いのスタイルにするか、選ぶのに悩む人も増えていると思います。ぜひ、ご本人の意向やご家族の考えを踏まえた上で、費用、利便性、そして弔いのあり方について熟慮しつつ、最適なお墓を選んでいただければと思います。

吉川美津子(きっかわみつこ)
葬儀・お墓コンサルタント。社会福祉士・介護福祉士。大手葬儀社、大手仏壇・墓石販売店勤務を経て、コンサルタントとして独立。テレビ・新聞などで葬送の解説を多く務め、終活全般に関する講演も行っている。新刊『葬儀業界の動向と仕組みがよ~くわかる本』(共著)、『お墓の疑問? 解決事典』(監修)、『お墓の大問題』、『死後離婚』(共著)など著書多数。

週刊新潮 2024年12月12日号掲載

特別読物「樹木葬墓、納骨堂、手元供養、0葬… 費用と長所・短所がわかる『最新お墓ガイド』」より

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