大人気の樹木葬墓、散骨には注意点が… 費用とメリット・デメリットが分かる「最新お墓ガイド」
多様化の時代を迎えている。弔い事情もまたしかり。とりわけ、お墓を継いでくれる人に不安がある場合、自分はどこで眠るべきか悩ましいところであろう。樹木葬墓、散骨、手元供養……。費用を含めたそれぞれの長所と短所がよく分かる、令和の最新お墓ガイド。【吉川美津子/葬儀・お墓コンサルタント】
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「これを済まさないと死んでも死に切れないです」
先日、私が相談に乗っていた、施設で暮らす80代後半のある男性は、体調が優れない中、必死にこう訴えていました。
自分が逝ってしまうと、先立たれた奥様と息子さんが眠っているお墓が無縁墓になるので、同じお寺の中の合同墓に移す手続きを進めてほしい、とにかく急いでもらいたい、と。
その様子を目の当たりにし、改めて、「お墓の問題」の切実さを実感させられました。
いくらドライな世の中になったとはいえ、やはりみなさん、死者をいかに弔うかということに心を砕かれている。だからこそさまざまな「お墓の選択肢」について知り、早めに準備することが重要だと思うのです。
〈こう語るのは、葬儀・お墓コンサルタントの吉川美津子氏だ。社会福祉士・介護福祉士でもある吉川氏は、「お墓問題」などに関して多くの人々の相談に乗ってきた「終活指南のプロ」である。
『お墓の疑問? 解決事典』を監修するなどしてきた同氏が、弔いのあり方に頭を悩ませている読者に向けて、令和のお墓事情を解説する。〉
昔から変わらないもの
できることならば、なるべくお墓にはお金をかけたくない。先祖代々のお墓はあるものの、自分が死んだ後に継いでくれる親族がいない。お墓参りは大切なことだけれど、なにしろ遠いし、お寺とのお付き合いが面倒で……。
お墓に関する悩みは多く、それに応えるようにさまざまなスタイルのお墓が広がっています。樹木葬墓、納骨堂、散骨に手元供養。ダイバーシティの時代を迎え、弔いのあり方も多様化しています。しかし、時代とともにお墓の形は変化してきたとはいえ、昔から変わらないものもあります。それは、先の男性に代表されるように、「弔う心」です。
私たちが確認できる最古のお墓は、ネアンデルタール人の時代にまでさかのぼります。形式の違いこそあれ、何らかの形で死者を弔うという行為を、私たちは「文化」として現代まで脈々と続けてきたのです。
いくら精神は変わらなくても……
とはいっても、とりわけ現代の日本社会は、これまでの長い歴史とは異なる事情を抱えています。超高齢少子化社会にして多死社会。いくら弔いを大事にする精神は変わらなくても、お墓を承継していく「担い手」が確実に減り続けているという現実にいや応なく直面しているのです。
お寺や霊園に和型墓石を建て、その下に骨壺を埋めて安らかに眠る。子や孫がお墓を受け継いでいく「承継」を前提とした、この従来型のオーソドックスなお墓(以下、従来型のお墓)が理想だと考えている方でも、承継者や費用などさまざまな問題から、現実にはそれがかなわないというケースが多く出てきています。
事実、新規にお墓を購入する方の4割以上は、後に詳述する樹木葬墓を選択するとの調査結果があります。すでに、承継を前提とした従来型のお墓が決してスタンダードとはいえない時代に入っているのかもしれません。
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