“マトリ”の事務所を取り囲んだファンが「イエスタデイ」を大合唱 ポール・マッカートニー「成田で大麻逮捕」秘話
所持量はなんと219グラム
松尾翼弁護士が、旧知の間柄だったリー・イーストマン弁護士から電話を受けたのは、日付が変わった17日の午前1時頃だった。イーストマンはポールの妻リンダ(98年に乳ガンで死去)の父で、ニューヨーク在柱の弁護士だった。
「私の娘婿のポール・マッカートニーが、先ほど成田空港でマリファナ所持の理由で逮捕された。至急、リンダに連絡を取って、ポールの弁護をしてほしい」
松尾は早速リンダやマネージャーが泊まっているホテルオークラへ行き、事情を聞いた。そして楽観を許さない状況であることを知った。イギリスでもマリファナは法律上禁じられていたが、違反しても罰金刑で済む。一方、日本は大麻の密輸は最高懲役7年。5グラム以上で起訴されるのが通例だったが、ポールは実に219グラムも所持していたのだ。
「起訴後の執行猶予は期待できそうだったが、最低2カ月の勾留は覚悟せざるを得ないと思った」
逮捕の4日後、リンダの兄で、やはり弁護士のジョン・イーストマンが来日。イーストマンの決断は早かった。まずコンサート主催者側との補償協定契約を成立させ、即座にかなりの額を支払ったという。
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所持量の多さゆえポールが置かれた状況は厳しいものに――。第2回【なぜポール・マッカートニーは「スーツケース」の一番上に大麻を入れていたのか 世界を震撼させた「成田で現行犯逮捕」裏話】では、それでも長期の拘留とはならなかった「特殊な事情」や、後年にポール自身が語った当時の心境などについて伝える。