今年こそ「新しい趣味」をみつけるべき理由 落ち着いたらゆっくり…という大きな誤解

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今後の人生の中で最も若く、気力も体力もあるのは「今」

 この「まそほの薄」談義を、趣味への希求と置き換えても、この教訓は十分に意味を持っていることだろうと思います。なんといっても、人生は一度きりです。しかもその人生が、いつ突然終わるか、そんなことは予測できないことにほかなりませんね。

 それゆえに、この取り返しのつかない時間を無駄にせずに、やりたい趣味があるならば、もう余計なことをしていないで、すぐにでも着手したほうがいいということです。それなのに、「よし、ひとつ定年になったら、それからゆっくりと趣味を楽しもう」などと悠長に構えていたら、実際に定年になってからの年月も、結局何もせず終わる可能性が大です。

 だいいち、いざ趣味を始める気になっても、定年を迎えた途端に病気で入院したり寝たきりになったりしたら、もはや決して取り返しはつかぬことゆえ、悔やんでも悔やみきれません。

 自分がいつまで健康で趣味を楽しめるのかなど、誰にも予想がつかないことです。今後の人生の中で最も若く、気力も体力もあるのは「今現在」の自分です。ですから、本気で趣味を始めたいなら、どんなに忙しくても今すぐ着手すべきです。 あれこれ考えているひまに、まずは、とにかく始めることが大事です。

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 この記事の後編では、引き続き『結局、人生最後に残る趣味は何か』(草思社)より、林望氏の解説による「自己流でやってはいけない趣味/やってよい趣味」を紹介している。

『結局、人生最後に残る趣味は何か』(林望著、草思社)

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【著者の紹介】
林望(はやし・のぞむ)
1949 年東京生まれ。作家・国文学者。慶應義塾大学文学部・同大学 院博士課程満期退学(国文学)。東横学園女子短大助教授、ケンブリッ ジ大学客員教授、東京藝術大学助教授等を歴任。『イギリスはおいし い』(平凡社/ 文春文庫)で日本エッセイスト・クラブ賞、『ケンブリ ッジ大学所蔵和漢古書総合目録』(P・コーニツキと共著、ケンブリ ッジ大学出版)で国際交流奨励賞、『林望のイギリス観察辞典』(平凡 社)で講談社エッセイ賞受賞。『謹訳源氏物語』(全十巻、祥伝社)で 毎日出版文化賞特別賞受賞、後に『(改訂新修)謹訳源氏物語』(全十 巻、祥伝社文庫)。学術論文、エッセイ、小説、歌曲の詩作、能評論 等、著書多数。『恋の歌、恋の物語』(岩波ジュニア新書)、『往生の物 語』(集英社新書)、『枕草子の楽しみかた』(祥伝社新書)等、古典評 解書を多く執筆。他に『謹訳平家物語』(全四巻、祥伝社)、『謹訳徒然 草』(祥伝社)、『謹訳世阿弥能楽集』(檜書店)等がある。また、若い 頃から能楽の実技を学び、能公演における解説出演や能解説等を多数 執筆、二十六世観世宗家観世清和師とともに新作能『聖パウロの回心』 作劇。また声楽実技を学んで声楽曲・合唱曲の作詩多数。代表作は合 唱組曲『夢の意味』(上田真樹作曲)、『旅のソネット』(二宮玲子作曲)。

デイリー新潮編集部

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