100歳を超えても骨密度は上げられる! 高齢者が食べるべき「最強の骨太料理」とは

ドクター新潮 ライフ

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最強の骨太料理

 骨を強くするのに欠かせない栄養素は何かと聞かれて、「カルシウム」と答えられない人はまずいないでしょう。「カルシウム=骨の元」という情報は、半ば常識といえると思います。しかし、カルシウム以外に大切な二つの栄養素は何かと尋ねられて即答できる人は、決して多くないのではないでしょうか。

 答えは、ビタミンDとビタミンKです。

 まずはビタミンDについて。カルシウムは吸収率が極めて低い栄養素です。せっかく摂取しても、ビタミンDの助けがなければ、腸管から吸収されて血液中に入ることなく、大半は体外に排泄されてしまいます。つまり、いくらカルシウムを積極的に取っても、ビタミンDが不足していれば台無しになってしまうのです。

 そしてビタミンKは、ビタミンDの助けを得て体内に吸収されたカルシウムが骨に沈着するのを促す働きがあります。従って、三つの栄養素のどれが欠けても、骨折しない強い骨をつくることはできないわけです。

 それぞれの栄養素を多く含んでいる食材としては、カルシウムであれば牛乳や乳製品、しらす干しなどの小魚、木綿豆腐、さくらえび、大根の葉などが挙げられます。

 ビタミンDに関しては、生シイタケの約30倍の含有量を誇る干しシイタケ、サケ、イワシ、キクラゲ、マイタケ、卵などです。

 ビタミンKは、ひきわり納豆、ブロッコリー、ホウレンソウ、ワカメ、鶏のもも肉、ひじきなどです。

 三つの栄養素をバランスよく含む骨太料理としてお薦めなのがクリームシチューやグラタンです。ホワイトソースにはカルシウムが豊富な牛乳が使用されています。そこに具として、サケやブロッコリーなどを入れて食べれば、「内」から骨を鍛えられます。

 ちなみに三つの栄養素以外に推奨する成分を挙げるとすれば、骨を壊す破骨細胞の働きを抑え、逆に骨芽細胞を活性化させる効果のある亜鉛です。亜鉛を最も多く含む食品は「海のミルク」とも呼ばれるカキ。ですから、サケとブロッコリーに、さらに豪勢にカキを加えたクリームシチューは「最強の骨太料理」といえるでしょう。

骨活のモチベーション

 二つの骨太体操に、三つの栄養素。その重要性は十分にお分かりいただけたのではないかと思いますが、何事においても継続することが大切です。効果が表れるまでには、少なくとも対策を開始してから3カ月程度はかかるでしょう。

 しかし骨は、トレーニングするとその成果が見た目にも表れる筋肉と違い、いくら鍛えたところで強くなっていることが自覚できません。つまり、骨活を継続するモチベーションを得にくいともいえるわけです。

 モチベーション維持のためにも、ぜひ、骨密度検査を定期的に受けてほしいと思います。年を取って何も対策をしなければ必ず低下していく骨密度が少しでも上がっていれば、それは確実に骨活の成果の表れであり、きっと継続のモチベーションになると思います。

 そして何よりも、骨密度検査がもっと一般化していくことこそが、「たかが骨折」という日本人の認識を変え、私たちに「幸せな高齢期」をもたらしてくれるはずです。

中村幸男(なかむらゆきお)
愛知医科大学特任教授。医学博士。自治医科大学卒業。日本整形外科学会専門医、日本骨粗鬆症学会認定医・評議員。ハーバード大学医学部講師、東京大学医科学研究所プロジェクトリーダー、信州大学医学部特任教授などを経て現職に。専門は骨粗鬆症、関節リウマチ、膝関節・股関節外科。『70歳からは「転んでも折れない骨」をつくりなさい』などの著書がある。

週刊新潮 2024年12月5日号掲載

特別読物「上皇后さまは転倒で手術 高齢者の“大敵”『2大骨折』の予防法」より

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