100歳を超えても骨密度は上げられる! 高齢者が食べるべき「最強の骨太料理」とは

ドクター新潮 ライフ

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二大骨折の防ぎ方

 ここまで見てきたように、QOL(生活の質)を著しく損なうリスクのある二大骨折の予防は、とりわけ70歳以上の高齢者にとって重要になります。そして先ほど申し上げたように、骨は何歳からでも鍛えられますが、加齢に伴って骨密度が急激に低下するのは50~60代ですから、70代に入る前からの早めの対策をお勧めしています。

 では、具体的にはどうやって二大骨折を防げばいいのでしょうか。キーワードは「二つの骨太体操」と「三つの栄養素」です。まずは二つの骨太体操から。

 その一つめは、私が考案した、大腿骨骨折の予防に役立つ「かかと落とし」。読んで字のごとく、つま先立ちをして上げたかかとを地面に落とす体操です(イラスト〈1〉)参照)。ポイントは「衝撃」にあります。

かかと落としで骨密度が上昇

 かかとを地面に落とすことで、大腿骨に衝撃が加わります。すると、この衝撃が骨の再生を担う骨芽細胞への刺激となります。刺激を受けた骨芽細胞は、骨を強くするホルモンを分泌し、骨密度を上げてくれる。同時に、骨への衝撃によってスクレロスチンという骨量の増加を阻むタンパク質の分泌が減少します。骨の「味方」を増やし、「敵」を減らしてくれる。かかと落としこそ、大腿骨骨折を防ぐのに最適の体操なのです。

 実際、先に紹介した延べ約4000人の80代の男女を対象にした調査では、毎日かかと落としをした方の大腿骨および腰椎の骨密度が上昇したという結果が出ています。80代であれば、何も手を打たなければ骨密度は低下していくばかりです。にもかかわらず、かかと落としをすることによって、骨密度を維持するどころか上昇させることができるのですから、これぞアンチエイジング体操といえるのではないでしょうか。

 実践する際に気を付けていただきたいのは、まず直立するのではなく、上体を30度ほど前傾させる点です。イラストにあるように、椅子の背もたれなどを支えにすることによって、体操中の転倒防止につながるとともに、この前傾姿勢が作りやすくなります。

 なぜ、前傾姿勢が重要なのか。それは、大腿骨に衝撃を集約させたいからです。直立の姿勢だと、かかと落としの衝撃が全身に分散されてしまうのです。

 また、やはりイラストにある通りに、膝を若干曲げてください。理由は同じで、膝を曲げると衝撃が膝を通り越してダイレクトに大腿骨に伝わりやすくなるからです。

 こうして前傾姿勢と膝の屈曲を保ちながら、「かかとを上げて、落とす」を30回繰り返します。これを1セットとし、1日3セット行ってください。

トリプル効果

 二つめの骨太体操は「おへそ引っ込み体操」です(イラスト〈2〉参照)。こちらは、背骨の圧迫骨折対策として効果が得られます。30秒間、おへその辺りにグッと力を込めるシンプルな体操です。かかと落としと違い、支えとなる背もたれがないスツールなどに腰をかけて行ってください。背もたれがあると、どうしてもそれに寄りかかって“楽”をしてしまうことがあるためです。

 極めてシンプルな体操ですが、大学の工学部の先生と協同で調べた結果、おへそ周りの腹筋はもちろんのこと背筋も鍛えられ、さらには背骨の骨密度まで上がる「トリプル効果」を得られることが分かっています。腹筋と背筋のバランスを整えてくれる上に、柔らかい椎骨に適度な刺激が伝わり、骨芽細胞が働いてくれるのです。

 おへそをへこませた状態を30秒間キープする。これを1日5~10回行ってください。ポイントは自然に呼吸をして息を止めないことです。止めると血圧が上がり、心臓に負担がかかってしまうので、高齢者にとってはリスクを伴います。やってみると分かりますが、シンプルな体操でも意外と疲れるものです。それはしっかりと筋肉が鍛えられ、背骨に刺激を与えられている証しでもあります。

 ここまで、かかと落としとおへそ引っ込み体操について説明してきましたが、これらは大腿骨骨折と背骨の圧迫骨折を防ぐために、体の「外」から骨を強くする方法です。そして、骨折予防にもう一つ欠かせないのが体の「内」から骨を鍛えることです。そのために重要なのが「三つの栄養素」です。

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