「石丸伸二氏」「斎藤元彦知事」「玉木雄一郎氏」が変えた選挙の常識 「既存政党」「マスメディア」の衰退で2025年「SNS巧者」が大量当選するか
ネット選挙が「地上戦」に
政治家もネットでの「集票」が、マスメディアで政策を訴えることで得られる票を凌駕しつつあると、気づき始めています。実際、ネット空間でどうプレゼンスを高めればいいのか、という相談を受けることもままあります。以前はネット選挙と言えば、やってもやらなくてもいい「空中戦の一部」だったのが、今は地元を隅々まで回るどぶ板選挙と同じような「地上戦」の一部になりつつある。玉木雄一郎さんが「ネットどぶ板」と表現したのは言い得て妙だと思います。
どぶ板というわけですから、難しいのは「勘所」を掴むのに手間も時間もかかるということです。決してネット選挙だから楽できるとか効率的だというわけではありません。玉木さんが6年前からYouTubeを始めていたように、どういうやり方が有権者に響くのか、政治家自身や政党が試行錯誤しながら、やってみるしかない。
2025年は選挙の影響力という点で、「マスメディアからネットへ」という不可逆的な変化がさらに加速するでしょう。それは都議選のような地方選挙であっても、変わりません。石丸さんも斎藤さんも国民民主党も都市部での強さが際立っています。石丸さんでいえば、先の都知事選で港区、千代田区、中央区、渋谷区などで得票率が高かった。それは、例えば町内会など、地域コミュニティに属していない有権者を、地域の壁を超えたソーシャルメディアを通じて掘り起こしている可能性を指摘できます。
仮に石丸新党が都議選に進出するのであれば、認知度を上げていく手段として既存のメディアをあてにせず、ソーシャルメディアを大いに活用するのが基本になるのでしょう。石丸さん本人も、動画で都議選を盛り上げるアイデアについて語っています。こうした動きは、選挙の情勢に大きな変化をもたらすことになりそうです。国政選挙に限らず、一般の選挙でも大都市圏からネットやソーシャルメディアの影響が強くなり、その結果、地域コミュニティに所属しない「見えない有権者」をターゲットにした「SNS巧者」が大量に当選していくことも起こりえると思います。
そうした流れが加速すると、地域コミュニティに組織や支持基盤が根を張る自民党や公明党、日本共産党などの歴史ある既存の政党は苦しくなるかもしれません。共産党が昨年末に「SNS戦略室」を立ち上げたのは危機感の表れでしょう。
「選挙報道」そのものが過渡期に
危機感を持たねばならない点ではマスコミも同様です。ネットに比べ、マスメディアの影響力が薄れていく中、「選挙報道」そのものが過渡期にある。これまでは政治的公平性に配慮して「薄く広く」候補者の情報を報じるのが、マスメディアの役割でした。しかし、いまではネットで情報を発信する人が山ほどいます。マスメディアも情報を発信するワンオブゼムにすぎません。
ですから、マスメディアは自分たちの役割を再定義する必要があります。なぜ、有権者はマスメディアの報道を見る必要があるのか、有権者はその報道から何を得るのか。メディアの役割が組織ジャーナリズムに基づいた「裏付けの取れた事実をコンスタントに示していくこと」であるなら、そこをより尖らせていくべく、インフルエンサーに負けず、途切れずに大量に情報を発信をしていくことが求められるのではないでしょうか。
[2/2ページ]