「石丸伸二氏」「斎藤元彦知事」「玉木雄一郎氏」が変えた選挙の常識 「既存政党」「マスメディア」の衰退で2025年「SNS巧者」が大量当選するか

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 昨年は「選挙」のあり方に大きな一石が投じられる1年となった。YouTubeを活用し、東京都知事選で票を伸ばした石丸伸二氏や若い世代の支持を得て躍進した国民民主党、別の候補者からのアシストを得て“復活”を遂げた兵庫県の斎藤元彦知事……。2025年に控える参院選や都議選でソーシャルメディアの影響力はますます増していくのか。JX通信社代表取締役の米重克洋氏に展望を聞いた。

「ネット選挙元年」

 選挙の歴史に残るエポックメイキングな出来事が相次いで起きたのが、2024年でした。真の「ネット選挙元年」と言える年だったと思います。

 2013年にネット選挙が解禁されてから、ソーシャルメディアを活用した選挙はどちらかというとニッチな票を集めるために使われてきました。特定の限定的な政策への支持や共感を得るため、特に参院の全国比例などでネット選挙は一定の効果をもたらしていた、というのがこれまででした。

 ただ、昨年はいままでとは次元の違う出来事が起きました。全体の票の20%、30%がソーシャルメディアによって動く、そこが大きなインパクトとなったのです。なぜ、突然そのような現象が起きたのか。それを知るためには、消費者に起きている「メディアシフト」というマクロな視点から見る必要があります。

 総務省のデータによれば、2021年、全世帯平均でネットの利用時間がテレビの利用時間を上回りました。つまり、テレビよりネットの方に消費者は時間を割くようになり、22年、23年とその差が広がりつつあります。

 2023年のデータで見ると、50代以下の世代ではテレビよりもネットの視聴時間の方が長く、60代以上になるとテレビの方を長く見ている。すると、50代より下の世代は相対的にネットの影響力を強く受けているということになります。一方、選挙の投票率では40代後半から70代が平均より投票率が高い世代になります。このように、年齢層で見ても、投票率が高い層とネット視聴時間の長い層がこの数年重なりつつあり、その数が年々増えてきている――。そうした動きが実際の結果として顕在化したのが昨年の選挙だったのではないか、と分析しています。

再現性の高い選挙手法とは

 ただし、昨年行われたソーシャルメディアによる影響が顕著だった選挙、つまり、都知事選、衆院選、兵庫県知事選のうち、都知事選と兵庫県知事選にはほかの政治家には真似できない特殊な側面があります。例えば、石丸さんは細かな政策よりも、自らの「政治スタンス」を強く訴えていました。それは政界のアウトサイダーを自任するかのような「政治屋の一掃」という言葉に象徴的に表れていました。政策なら誰かが誰かの真似をすることは容易ですが、政治に向き合うスタンスはほかの政治家が真似しようと思っても、なかなかできることではないでしょう。

 兵庫県の斎藤知事に至ってはさらに特殊です。マスコミ報道によって猛批判にさらされる中で全国的知名度を獲得し、その後県議会で全会一致の不信任決議を受けて失職したうえで再度立候補に至るプロセス自体がかなり特殊ですし、選挙戦に入ると「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首が斎藤知事を当選させるために自ら立候補してサポートする、事実上の二馬力選挙になったという点も特殊です。強力なインフルエンサーが自ら立候補してまで側面支援したことによって、斎藤さんは支持を伸ばした。これは別の候補者が再現しようとしてもなかなかできるものではありません。

 一方、衆院選における国民民主党のやり方は、石丸さんや斎藤さんと比べれば再現性の高い選挙手法と言えそうです。

 衆院選では、各政党がネットに力を入れていました。自民党など、他の政党も公約を訴える動画を作ってはいたものの、一つの動画にマスマーケティング的に広告費を投下しているだけなので、再生回数は多くても、「いいね」は少なく、恐らく実際の票には殆どつながっていません。かたや、国民民主党は明確にターゲティングして多くのショート動画を作成していました。全体として「手取りを増やす」というキャッチフレーズを用いて、若い世代をターゲットにはしながら、全員に同じメッセージを届けるのではなく、「103万円の壁」や「ガソリン暫定税率廃止」など政策ごとに動画を作り、それぞれの政策に関心のある層にメッセージを届けようとしていました。そのため、動画の再生回数は少なくともエンゲージメントが高かった。民間の広告運用としては当たり前のセオリーなのですが、それを国政選挙に初めて本格的に持ち込んだのが国民民主党だったと言えます。

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