「親のうんちをチェックして健康状態の確認を」 色とカタチで何が分かる? 専門家が指南「タブー視はもうやめましょう」

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ステーキ、ハンバーガーを取ってでも……

 できれば人生の最後まで誰かの手を煩わせずに自力で排泄し続けたい。そのためには、なにを心がければいいのか。

「基本はやはり食事、睡眠、運動。生きるとは、食べて動くこと。ウォーキングや軽いスクワットができれば筋肉は衰えないので、まだ自力で排泄もできます」

 食事は、たんぱく質を積極的に取りたい。

「中高年が生活習慣病になると、糖質や脂質を減らし、野菜中心の食事を勧められますよね。でも僕は、高齢者には肉を積極的に取ることを勧めています。ステーキやハンバーガーなど高カロリーの食事をしてでもたんぱく質を取って、筋肉量を維持していただきたい。脳卒中のリスクよりも、転倒のリスクのほうがずっと大きいからです」

 筋肉量の維持のために、今はプロテインを処方する病院もあるという。

「健康保険の範囲内で、足りない栄養をサプリメントで補えるようになりました。必要な栄養は食事から取るのが理想です。でも、食品だけから摂取する場合、量を食べなくてはいけません。それは高齢者には難しいので、少量で効率よく栄養を取れるサプリの力を借ります。ただし処方されるのはプレーンなプロテインが主。今は市販でおいしく飲めるものも手に入るので、いろいろと試してみてください」

もっとも便が出やすい姿勢は?

 食べれば、出すことも考えなくてはいけない。

「高齢者はとくに便秘にならない工夫が必要です。うんちを出さないと、消化器系の働きが衰えます。食欲が落ち、体重が落ち、筋力も弱って転倒し、認知症が進む、マイナスのスパイラルにはまっていきます」

 うんちが出やすくなるようにトイレ内の環境を整えることも必要だ。

「洋式の便座で排泄する場合、上体と腿の角度はほぼ90度になります。この姿勢は、実は出しにくい。個人差はありますが、もっとも出やすいのは35度。スキーのジャンプ競技で飛ぶ直前のイメージです」

 日本の古典的な和式トイレで排泄していた時代は35度に近かった。

「かつての日本人は理想的なフォームで排泄していました。でも今は、和式はあまり見なくなっています。慣れない和式ですると、腰やひざを痛めるリスクがあるので、洋式トイレの足下に台を置いて角度をつけてはいかがでしょう。35度は難しいものの、そこに近づけることはできます。入院中でも、看護師の許可が得られるなら、いわゆる“マイ台”の持参を勧めています」

 下剤の助けを得てのコントロールも。

「便秘のときに、薬の力で出すこともできます。家族やヘルパーの負担軽減のために排泄を規則正しくさせたり、2日に1度のペースになるように調整したり、ドクターに相談してみましょう。排泄のサイクルは病院側は分からないので、家族の側からリクエストするといいでしょう」

 どんなうんちをするか、自分でうんちができるかどうか――それはどう生きるかということでもある。ただ排泄するだけでなく、自分の健康とどう向き合うのかを考えて行ってほしい。

神舘和典(こうだてかずのり)
ライター。1962年東京都生まれ。雑誌および書籍編集者を経て現職。音楽をはじめ多くの分野で執筆。共著に『うんちの行方』、他の著者に『墓と葬式の見積りをとってみた』『不道徳ロック講座』(いずれも新潮新書)など。

週刊新潮 2024年11月21日号掲載

特別読物「大介護時代 うんちの『色』と『カタチ』で親の健康チェックをする方法」より

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