「親のうんちをチェックして健康状態の確認を」 色とカタチで何が分かる? 専門家が指南「タブー視はもうやめましょう」
多くの高齢者が介護を必要とする現代社会。子は時に親の下の世話もしなければならなくなる。つらい作業だが、親の健康状態を知るには実はうんちをチェックするのが一番なのだという。しかし、言うは易く行うは難し。そのノウハウを専門家に聞いてみた。
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あなたはいつも自分がどんなうんちをしているか、認識しているだろうか?
臭いといって、見ずにすぐ流していないだろうか?
自分のうんちを見ること、健康時のうんちの状態を知ることは、自分の命を守ることにもなる。
たとえば、日本で年間約16万人(国立がん研究センター「がん統計予測」より)が罹患しているとされる大腸がん――。末期のステージIVで見つかり治療した場合の5年生存率は18.3%。5人のうち4人以上が亡くなっている。しかし、初期のステージIならば92.3%。ほとんどの患者が助かっている(以上、同「院内がん登録2014-2015年5年生存率集計」より)。早い時期での治療がいかに重要かは明白だ。その早期発見に、うんちは重要な役割を担っている。
「肛門から6リットル出血」
「うんちは体の中の異変をいち早く教えてくれます。うんちをチェックする習慣は身を守る手段の一つです。私たちはこれを“観便(かんべん)”と言っています」
きっぱり言うのは日本うんこ学会会長の石井洋介さん(44)。うんちから体を知り、ひいては人生もプランする消化器内科のドクターだ。石井さんは潰瘍性大腸炎で苦しい10代を経験している。発熱、下痢、嘔吐が続き、便意は1日に15回くらい。当時は思春期。排便の失敗による心のダメージは大きく、高校卒業後引きこもり状態に。
「19歳のときに肛門から6リットル出血。手術で大腸を取り除きストーマ(人工肛門)生活も体験しています。回腸嚢肛門管吻合術(かいちょうのうふんごう)で自前の肛門を取り戻し、高校レベルから勉強し直しました」
それで今は消化器内科医として在宅医療に携わる。
「40代以降はとくに観便を習慣化するべきでしょう。がんや生活習慣病のリスクが一気に高まるからです」
大腸がんか、痔か
消化器系にトラブルが発生すると、多くの場合、うんちの色に変化がある。
「胃や十二指腸に腫瘍や潰瘍ができて出血すると、血液と胃酸が混じり、イカ墨のような真っ黒なうんちになります。胃もたれ、痛み、吐き気を伴うのが特徴です。腫瘍ができやすいのは胃の出入り口あたり。食べ物の通り道が狭まり、和食をはじめ、消化しやすい食事が欲しくなります」
小腸、大腸の病気も、排泄時の出血で見つけられる。
「小腸がんの症例は多くありませんが、大腸がんの患者さんはずっと減りません。とくに直腸やS状結腸はがんになりやすい。上行結腸のがんはうんちが黒っぽくなることもありますが、肛門に近い直腸やS状結腸のがんは鮮血が混じります」
ただし肛門から出血があると、痔と判断しがちだ。
「大腸がんか、痔か。排便時の出血ではなかなか区別できません」
痔は大きく3種類。便秘による硬いうんちなどで肛門周辺が傷つく裂肛(切れ痔)。肛門周辺に血液が滞り血豆のような状態になる痔核(いぼ痔)。肛門内に管状の穴が開き、中が化膿する痔瘻(穴痔)。裂肛と、肛門の内側にできる内痔核はうんちに赤い血液が混ざる。痔のせいで、大腸がんに気付かないこともあるらしい。
「排泄時の出血で見つけた痔にドクターの意識がいき、がんを見逃がすケースはときどき耳にします」
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