「布川敏和」が明かす昭和アイドルの“紅白歌合戦ウラ話” メリーさんを激怒させた「不謹慎コメント」に、本木雅弘が泣くほどイヤだった「スシ食いねェ!」誕生秘話も
「こんなに売れるなら、自分で完成させときゃよかった」
で、ルームサービスで頼んだ寿司を食べながら歌詞を考えて。葛ちゃんに「もう深夜2時だよ? 明日やるんでしょ?」とせっつかれて、ふと机の上を見たら寿司を注文した時のメモ書きが残っていた。
「もういいや! このメモから好きなネタを選ぼう!」「中トロ、コハダ、アジ……」「そうだ、ラップだし韻踏まなきゃ。上がりとガリ、でいいな」「『へい、らっしゃい』とか、それっぽいのも入れとくか」
コンサートで歌っていたのは今歌われているのより短い、もっと即興な感じだったけど、ファンには結構ウケたの。薬丸が復帰した後のツアーでも「スシやってー」とリクエストされたしね。
そしたらレコード会社のプロデューサーが「スシの曲、もっと長くして1曲に仕上げろ」って言い始めて。でも当時は僕も六本木に遊びに行ったりして忙しかった。そのプロデューサーが「もう、プロの作詞家入れちゃうよ?」って言うから任せきりにしていたら、その年の12月にNHKの「みんなのうた」で流れることになったの。
あの曲をきっかけにコンサートに子連れのお母さんが来るようになったりして、ファン層は確実に広がった。「こんなに売れるなら、自分で完成させときゃよかった」って本気で後悔したよ。
「俺たちスシですよ?」
でも、紅白であの曲を歌うことには葛藤もあったんだ。みんなが歌手人生を懸けて出場している紅白であんなコミックソングみたいな曲を歌ったら、怒られるんじゃないかって。ところが、ビクビクしながらリハーサルで披露したら、みんな面白がってくれて。
ただ、本木だけは最後まで嫌がっていた。仲が良かったチェッカーズの楽屋で「俺たちスシですよ?」って泣いていたらしいからね(笑)。
この年の紅白は、“事件”もあった。紅白出場が決まったばかりの頃、六本木で僕とチェッカーズの藤井フミヤ君と吉川晃司の三人で飲んでいるときに「誰もやったことのないパフォーマンスやろうぜ」って盛り上がって。僕が「足を踏み外してステージから客席に落ちる」と宣言すると、フミヤ君とコウジも「じゃあ俺たちも何か考えとくよ」って。
で、本番の日に楽屋のフミヤ君を訪ねたら、顔は白塗り、髪の毛にも白のスプレーを振りかけて、衣装も真っ白という白ずくめ。一方、コウジは「楽しみにしておいて」ともったいぶるばかり。
「俺じゃなくて河合奈保子ちゃんのところに謝りに行け!」
その年、コウジは白組のトップバッターだったんだけど、本番が始まってもパフォーマンスは普段通り。でも途中でシャンパンのボトルを取り出して、それをラッパ飲みして口から思いっきり噴射し始めた。僕は「シャンパン噴射じゃちょっとインパクトが弱いな」と思いながら見ていたんだけど、曲が終了してもギターが鳴りやまない。そしたら今度はライターのオイルをギターに振りかけてステージ上でギターに着火。ジミ・ヘンドリックスがやったやつだよね。
かわいそうだったのは次の河合奈保子ちゃん。コウジがギターをかき鳴らしている中でオーケストラの演奏が始まってしまい、タイミングを逃したのかうまく歌えなくなっちゃったんだ。
4番手で出た僕はコウジのシャンパンとオイルを利用してステージ上で3度もコケてみせた。でも満足しながら舞台袖に戻ると、コウジがパニック状態で「ごめん、大丈夫か!?」って。「違う違う、俺のはワザと! 俺じゃなくて河合奈保子ちゃんのところに謝りに行け!」って慌てて方向転換させたよ。
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