修学旅行は北朝鮮へ「本音なんて話せません」 朝鮮学校の卒業生が振り返る“悪夢の2週間”

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 NSC大阪43期生の吉本芸人・パクユソン氏は、小中高の12年間を朝鮮学校で過ごした経歴を持つ。高校3年時には修学旅行に赴くことになったが、行き先はやっぱり――。

(前後編の後編)

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※この記事は『面白くてヤバすぎる!朝鮮学校』(パクユソン著、ビジネス社)の内容をもとに、一部を抜粋/編集してお伝えしています。

修学旅行で訪れた北朝鮮

 朝鮮学校の高校の修学旅行先は北朝鮮だった。しかも2週間も北朝鮮に滞在する。これはほぼ“短期留学”だ。北朝鮮では20時を過ぎるとお湯が出なくなり、錆汁しか出なくなるのでお風呂に入れなくなるし、停電も日常茶飯事だった。

 これから北朝鮮での思い出話をつづっていくが、これはあくまで僕の修学旅行体験記だ。修学旅行で北朝鮮に行った朝鮮学校出身者は多いが、人それぞれの修学旅行記があるはずだ。

 同じ場所で同じ景色を見ても、人それぞれ思うことや感じることは違うと思う。あくまで一個人の思ったことや感じたことだということだけ、先にお伝えさせていただきたい。

 ところでみなさん、北朝鮮に行ったことないでしょ?

「人生半分、得してますよ」

バス車中でのあり得ないルール

 旅行中の2週間は、ほとんどバスで移動し、いろいろな観光地を回った。目的地まで片道何時間もバスに乗ることもあったのだが、車内では“絶対に守らないといけないルール”があった。寝ることは許されず、ずっと北朝鮮の曲を歌わないといけないというルールだ。

 北朝鮮の曲とはもちろん、金一族をただただ褒め讃える曲、もしくは社会主義国家は素晴らしい的な曲の2パターンのみだ。日本から用意してきた北朝鮮の曲が100曲ほど載ってある歌集を開き歌う。マイクが用意されていて、指名されると1人で歌わないといけない。歌い終わると次の人を指名するシステムで、バスの中では、これが延々と行われていたのだから、まさに地獄絵図と言っていい。

 途中から飽きてきたのかわからないが、朝鮮学校の先生と北朝鮮のガイドの方がバリエーションを増やして、男女のデュエットが始まった。ひたすら金一族を褒め讃える曲と社会主義国家は素晴らしい的な曲を歌わされ続け、聞かされ続けていたので、僕はどんどん自我が崩壊しそうになって――。

 そこで僕が独自に編み出した技がある。それは脳内でJ-POPを流しながら、音姫のように北朝鮮の曲をかき消すといった技だ。バスの中でなんとか自我を保つことができていたのはJ-POPのおかげだったのだ。

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