山谷で「500円売春」…身寄りのない女性たちに「終の棲家」を 「きぼうのいえ」創設者が書いた「孫正義」への手紙
「きぼうのいえ」創設者
自ら創設した山谷のホスピス「きぼうのいえ」の理事長の座を 追われ、吉原の1Kで独居生活の山本雅基氏。61歳の現在、「やりたいことが3つある」と話す。(全4回の第3回)
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【写真】家賃5万3700円…吉原のど真ん中にある1Kマンション。山本氏の家の中、実際の様子。愛猫の姿も
「ひとつは喫茶店。この近くにある情報喫茶ではなくて、モーツァルトとか のクラシックを流して『カフェ・アマデウス』という店名を考えている。もうひとつは僕のように精神を病んで苦しむ人たちのホーム。いずれも僕の夢、まず何といっても体調が戻ってこないとならないけど、3つ目のはもう進めている。もう一冊、本を出したいと思っているんだ」
その本とは「仏教の輪廻転生とキリスト教の普遍救済説をかけ合わせて、合併させたもの」なのだそうだ。
「福祉もそうだけど、やっぱり僕は人生つまり人の生き死にに興味があるんだ。悲しみが渦を巻いているようなときも、理不尽な辛酸をなめなければならないような絶対に負の状況のときも、そんな人生でも輝いて見えるときがある。こんな場末の部屋にひとり閉じこもっていても、淡々とした時間のなかに小さな悦びを見出すことができたりする。そうすると、いいなあって思うんだよね。自分が負の状況になってはじめて、かなしい思いをしている人の気持ちがわかったんだ」
もともとアイデアマンで、身寄りのないホームレスらを受け入れるホスピス「きぼうのいえ」も山本氏が創設し世に広めた。資金も融資もコネもホスピス運営の経験も何もなかったところから動いて、40坪もの土地を手に入れて4階建ての立派な 施設を建てた。
それだけじゃない。ドヤ街として知られてきた山谷を福祉タウンとして再生していく構想も描き、ソフトバンクグループ代表の孫正義氏に手紙を送り、支援を求めた。「ハートウェアタウン山谷実行委員会理事長」を名乗り、山谷を「日本の共生、福祉の最先端」とする壮大な慈善福祉構想で、これは2016年に「『拝啓 孫正義様』東京・山谷からの手紙」とのタイトルで夕刊紙でのインタビュー連載となった。さらに、ソープランドなど性風俗に従事する女性たちの駆け込み寺のようなホーム構想も語っていた。
「吉原ではね、その昔、一度だけ後学のためにソープに行ったことがあって、あの狭い部屋に一日中押し込められるようにして客を取っている女性に会って驚いたことがある。若い頃にはピンサロにも行ったしマントルも行ったしビニ本も買ったけど、ソープで働いて、いわゆる定年のようになった後に、行き場がなかったりするという話を聞いたから。それで身分の安定していないソープランド嬢の看取りの家をつくりたいと言ったら『大いにやれ』と背中を押してくれた医療従事者もいたんだ。だけど、彼女たちは名前を伏せるというか、世の中にそのことを知られないようにして生きているから、ホームをつくったとしても、それがバレてしまうことを恐れるだろうから難しいという結論に達した。言われなき差別を浴びて助長させてしまう危惧もあり、簡単じゃない。でも救ってやりたい気持ちは今もある」
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