「エヴァンゲリオン」をテーマに作詞15年…林原めぐみが「対ゴジラ」の新曲に込めた人生のヒント
作品の世界観を120%借りながら…
――確かに、シングルのジャケットに印字されている「Gathering」の「G」の字が、ゴジラの背びれのようにデザインされています。一度完結したつもりだった“集結”シリーズの、さらに先の世界観を歌詞に落とし込むにあたって、どんなことを考えていらっしゃったのでしょうか。
林原:どのエンターテインメントでも、「闘い」を描くことを避けて通れない方たちは、地球上で起きているリアルな戦争がなくならないことに対して皆さん嘆いているんだと思うんですよね。 私自身もそれを踏まえて歌詞にするということに非常に心が痛むというか……。何を言っても嘘や綺麗ごとになってしまう気がして。でも、そんな中でも希望を失いたくないという想いを込めました。
今回に限らず、私が作詞をするとき常に心がけているのが、「作品の世界観を120%借りながらも、みなさんの私生活にどこか寄り添う」ということなんです。「Gathering」でいえば、〈抗う事すら許されない 追い込まれた選択でも〉という一節。これはカイザーギドラと闘うしかない状況を指しているんですけど、現実の生活でいえば受験の前日だったりとか、予想外の転勤や異動で不安になったりとか、子供でも大人でも人生のいろんな局面でそんなシーンに遭遇すると思うんですよね。 そんなときにどうするか。たとえば、「逃げるが勝ち」じゃないけど一旦撤退して考えるのもアリだし、その場で挑むのもアリだし。どんなに追い込まれても、希望を持って自分の人生を選択するヒントになればと思って書きました。
それから、「後悔」というものへの想いも歌詞に込めました。〈後悔は生き抜いたその後 命と共にすればいい〉〈後悔は進んだ先にある 踏みとどまらない証と〉で、「後悔」という言葉が2回出てきます。私は1992年からTBSラジオ『林原めぐみのTokyo Boogie Night』でパーソナリティをし続けているのですが、「後悔したくないからなかなか行動を起こせない」というお便りも少なくなくて。動くことで傷つく人が増えていると思うんですよね。でも、「後悔は踏みとどまらなかったからこそできたことだし、誇りだぞ」ということをお伝えしたかった。
ゴジラが永遠のヒーローとして海を超えて世界で愛されているのは、ただ大きくてカッコいいからだけではないですよね。背負っている哀愁や、やられても最後の力を振り絞って光線を出し切る粘り強さ、負けた先にもある美学を持っていて、複数の監督によっていろんな角度からそれらの役割を担っているから、世界中で愛されていると思うんです。「負けは負けではない」というゴジラの果敢な闘いっぷりから、みんなの人生にウロコ1枚でもお届けできればなという気持ちで詞を書きました。
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