「病院のハシゴ」は意味がない? 慢性的な疼痛が消えない理由と効果的なトレーニングは? 「脳が痛みを作ってしまう」

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田んぼのおじいちゃん

 二つの体操とも、左右5回くらいずつから始め、慣れたら回数を増やしていってください。継続すると、徐々に体が動かしやすくなっていくことでしょう。

 腰が曲がりながらも、毎日快活に田んぼ仕事を続けているおじいちゃんを見かけたことはありませんか? そういうおじいちゃんは、腰はもちろん、長年の労働で膝なんかも痛いに違いありません。でも、毎日動き続けることによって、なんだかんだで筋肉と心肺機能が鍛えられ、元気に長生きできている。動くのは完全に痛みを取り除いてから、と考えていたら、生き生きと田んぼ仕事などできません。

 痛みゼロを目指すのか(そもそも難しいケースがあるわけですが)、痛みを気にし過ぎず、そして痛みに振り回されることなく活動的に生きるのか。どちらがより望ましい人生なのか――。「田んぼのおじいちゃん」が、慢性疼痛の方が進むべき道を示してくれているのではないかと私は考えています。

牛田享宏(うしだ・たかひろ)
1966年生まれ。高知医科大学卒業。専門は疼痛医療学、小侵襲治療、運動療法。米国のテキサス大学、ノースウエスタン大学の客員研究員などを経て、愛知医科大学教授に。現在は、愛知医科大学・疼痛緩和外科部長と同大病院の副院長を兼任し、日本の医学界において痛み治療をけん引している。『いつまでも消えない「痛み」の正体』などの著書がある。

週刊新潮 2024年12月26日号掲載

特別読物「腰、肩、膝、首、背中… 2000万人が悩まされる『慢性疼痛』対処法」より

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