「ハンコ」はともかく「名刺」は作っておいた方が良い理由 社会がまだ必要とする「名刺の威力」の正体

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意地を張らなくてもいいのでは

 合理主義者として名刺を持たない判断は尊重するものの、社会がまだ名刺を必要としている以上、そこに乗った方が合理的である。いくらインターネットが発達しようが、社会構造として名刺はまだ強い影響力があるとこの度感じた。

 一方で、ハンコについては、以前よりも影響力は低下している。2000年代前半、金融機関や役所ではとかくハンコの押印を求められたが、最近は「あっ、別にいらないですよー。身分証明書見ましたので」と言われることが多い。ここまでくればハンコはいらないのだが、名刺は今でも必要という風潮がある。

 そう考えると、「名刺を持たない」という意地を張らないでもいいのではないか、と思ってしまうのである。もちろん持たないことを合理的であると考える当人の主張については尊重する。だが、自分だったら100枚120円払えばその一言を言わないで済むので楽だし、なんらかの「おいしい仕事」をもらえるきっかけとして名刺の威力については実感している。

 このように名刺の意義について述べたものの、目立とうとして定形外の正方形の小さい名刺やら、無駄にぶ厚かったり金箔を使った名刺は無駄だと思う。「セルフブランディング」とやらだろうが、人はそこまで他人の名刺にブランド力を感じてはいない。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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