「ハンコ」はともかく「名刺」は作っておいた方が良い理由 社会がまだ必要とする「名刺の威力」の正体

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「ハンコ」をバカにするように

 近年、都会では名刺を持たない人が増えている。会社員であれば会社から付与されるが、フリーランスの場合は自ら作る必要があるため、面倒くさがって作らない人もいるのだ。私(フリー編集者・中川淳一郎)も今や半隠居の身であるため、名刺はいらないと思っていた。

 ところがどっこい、必要な機会が多いと最近実感するようになっている。名刺がないと色々と煩わしいことが多いのである。それは社会がまだ名刺を必要なものと認識しているからだ。

 一方、名刺を持たない人の言い分は以下の通りである。基本的に名刺は無駄なものと考えている。

・どうせその場限りの関係であるだろうからこちらから渡さなくてもいい
・SNSがあるから、必要な時はこちらに連絡をもらうことはできる
・多数の名刺をもらっても結局その後見直して連絡をする人はそのうちの5%ぐらいしかいない。95%のために名刺を作るのはムダ
・LINEの交換をすれば充分

 そして、そもそも名刺を持つことがダサい、と考えている節もある。「ハンコ」をバカにする風潮もあるが、それと同じ感覚で名刺もバカにする対象なのである。これらはすべて正論である。しかし、社会の風潮がこの感覚に追いついていない現状がある。

名刺がもたらした効果

 エラい人から名刺をもらう時、自らは下から出し、その人物の後に名刺を受け取り、一読して「ハハー、素晴らしい肩書ですね」的ペコペコ姿勢を見せる様式美が存在する。これが2025年を目前とした現在の日本には存在するのである。

 私自身、隠居の身なので名刺は不要だと思っていたのだが、現在居住する佐賀県唐津市において飲み屋で出会った人から名刺をもらうこともある。その際「あ、私は名刺を持っていないのです」と言った時の相手の落胆ぶりから名刺の必要性を感じ、東京に住む弊社社員に100枚120円の名刺を作ってもらった。

 そして12月、フジサンケイグループが主催する「ニッポン移住者アワード2024」の審査員としての仕事をしたのだが、私以外の審査員4人をはじめ、多くのスタッフと名刺交換をした。登壇者とも名刺交換をしたが、その人数、20名。

 もし事前に作っておらず「あ、私、名刺持っていないんです」と恐縮しながら、ただし、本心では「チッ、うぜーな」と思いながら20回も言うのは本当にキツかったと思う。今回お会いした方々とは今後もお付き合いをしたいと思う魅力ある人々だったため、その名刺に書かれたアドレスに連絡を今後していきたいと思っている。逆に彼らも私を気に入ってくれたのであれば連絡をくれるだろう。現に主催者の一人・扶桑社のT氏からは連絡をいただけた。これは名刺がもたらした効果である。

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