杏里、海外人気曲のアニメーション動画に反響 新旧ファンを取り込んだライブも完売御礼…Adoによる「CAT’S EYE」カバーでさらなる躍進なるか
「Remember Summer Days」の動画も海外リスナーに好評、そのワケは?
そんな杏里が、‘24年12月にストリーミングでの大ヒット曲「Remember Summer Days」のアニメーション動画を公開した。本作は角松敏生が作詞、作曲、編曲を手がけた、まさにシティ・ポップの王道中の王道といった、爽やかながら穏やかなナンバーだ。
今回の動画は、音楽分野に限らず国内外のブランドのアートワークを多数手がける日本人イラストレーター、chao! とのコラボレーション。chao! の作品は、パステルカラーを効果的に使うことで、’80年代ならではの雰囲気を醸し出すのが特徴的だ。本作でも、長い髪の女性が秋風に吹かれながら夏の日に出逢った男性のことを思い出すというストーリーが、淋しさと優しさの絶妙なバランスで描かれている。
楽曲の配信元であるフォーライフの担当者によると、本作の動画をYouTubeやInstagramで公開したところ、
「YouTubeでは、コメントの約8割が海外のリスナー。Instagramではさらにそれ以上で、海外では“シティ・ポップ=80年代風のアニメ”というイメージが定着しているのでは」
とのこと。日本ではもしかすると、杏里のような「女性ボーカリスト/シンガーソングライターのファン」と「アニメファン」との間に、少し隔たりがあるのかもしれない。だが、海外では、アニメーションやイラストに合致した煌(きら)めきのある歌声ならば、その出自に関係なく聴かれている。現に、韓国人DJのNight Tempoが昭和のポップスをミックスした“Showa Groove Mix”シリーズでは、ボーカリスト出身の松原みきや杏里も、アイドル出身の斉藤由貴や菊池桃子も、ともに人気となっている。こうした海外の傾向を受け、日本のリスナーの間でも、例えば「昭和のアイドルしか聴いていなかったが、杏里も好きになった」といった効果が広がっていくことに期待したい。
なお、杏里関連では、’25年にアニメ『キャッツ・アイ』がディズニープラスで完全新作アニメシリーズとして全世界で配信されるにあたり、若手アーティストのAdoが主題歌「CAT'S EYE」をカバーすることも決定している。これにより、杏里のオリジナル版にさかのぼるリスナーも多そうだ。
近年は、若い世代の観客が増え、全国の大ホールでのライブも再び完売するようになった杏里。’25年の3月、4月は東京、横浜、大阪のビルボードライブも決定しているが、前述の動画やカバーによる話題性も高まり、こちらは一層のチケット争奪戦となりそうだ。
ちなみに、‘24年のツアー『ANRI LIVE 2024 FUN TIME』のセットリストを見ると、「オリビアを聴きながら」「CAT'S EYE」「悲しみがとまらない」「気ままにREFLECTION」といったおなじみのヒット曲から、「WINDY SUMMER」「Remember Summer Days」「Last Summer Whisper」など近年の海外リスナーに人気のシティ・ポップ路線、さらには「夏の月」「嘘ならやさしく」「HAPPY ENDでふられたい」とヒットを連発していた時期のアルバムのリード曲まで網羅されている。このラインナップから、彼女がお久しぶりのファンも、新たなファンも受け止めようとしている意図が伝わってくる。そうしたしなやかな姿勢は、長く同じことを続ける際の秘訣を、私たちにそっと教えてくれているようだ。
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記事前編ではサザンやユーミンをも上回る杏里のサブスク人気などについて紹介している。
【PROFILE】
◎杏里(あんり) 神奈川県出身。1978年、シングル「オリビアを聴きながら」でデビュー。’83年に「CAT'S EYE」「悲しみがとまらない」が連続ヒットし、80年代のシティ・ポップをけん引。その後、ダンス・ミュージックやナチュラルなスタイルのバラードなどの自作曲を中心としたアルバムが多数ヒット。現在も、日本と海外のミュージシャンによるグローバル・バンドで国内外の活動を積極的に行っている。現在、「悲しみがとまらない」のB面に収録の楽曲「Remember Summer Days」×日本人イラストレーター chao! とのコラボレーション動画が公開中。