「既成政党はインチキで守られている!」 百田尚樹氏が怒る「不平等過ぎる選挙ルール」

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 先の衆議院選挙で作家・百田尚樹氏が代表を務める日本保守党は比例代表の得票率2.1%を獲得し、小選挙区と比例代表合わせて3名の候補者を国会議員にすることに成功。これによって政党要件を満たし、国政政党として認められることとなった。団体の2023年10月の設立からわずか1年で国政政党に、というのはかなりの「スピード出世」なのは間違いない。

 当人はこの成功をどう捉えているのか。百田氏に代表としての分析や見解を聞いてみた。

やってみて分かった「理不尽なルール」

――なぜこうなったと思っていますか。

 一人も国会議員がいない政治団体が1年で国政政党になった例は、もしかしたら戦後初めてのことかもしれません。自分で言うのは何ですが、快挙かな、と。

 それができたのは、少しずつ保守の価値に目覚めた人が増えたからだと私は捉えています。自民党への期待を失った岩盤保守層が減り、その分が国民民主党や日本保守党に流れたのでしょう。

 それにしても、選挙はこんなに既成政党に有利なシステムになっているのか、ということに驚きましたね。われわれのような政党要件を満たしていない政治団体が比例ブロックに候補者を立てる場合、常識的には2~3人立てれば十分でしょう。

 ところが、決まりで定数の20%は候補者を立てないといけないことになっています。つまり近畿ブロックならば定数が30なので6人。ただ名前を書けばいいだけではなく、供託金が必要になるので、それだけで供託金が3600万円ですよ。

 仮に全国の11ブロックに候補を立てようとすると、2億円以上かかる計算になる。実際には当選の可能性の低いところは立てないとして、ではどこに立てるかとか、細かく計算して戦略を立てる必要がありました。国政政党の場合は、こんな20%うんぬんという制約はありません。好きな人数を立てればいい。おかしなことに新規参入のほうが厳しい条件を突きつけられているんです。

 これは要するに、既成政党が新規参入を阻むためのルールなのです。相当なお金がないと候補者も立てられない。しかしこのルールに既成政党は異を唱えません。自分たちに有利だからです。政治にお金がかかることが問題だと言いながら、与党も野党もこの件についてはまったく問題視していないのが現実です。

 これは理不尽なルールのごく一部で、ポスターの枚数その他、あらゆるルールが既成政党に有利になっています。メディアの取り上げ方にしても、われわれは事前にかなりの支持を得ていたことが分かっていたはずですが、選挙戦についてはほぼマスコミに扱われませんでした。NHKのニュースでは各党の選挙戦を3分ほどレポートするのですが、ここでもまったく取り上げられていません。もしも同じように取り上げられていたら、もっと得票が伸びたと考えています。

 あらゆるルールが既成政党に有利に作られている。インチキですよ。

共産党はマトモですか?

――でも、ある種の「売名目的」の立候補を防ぐという意味もあるんじゃないでしょうか。無茶苦茶な政党がどんどん現れて、それらを普通の政党と平等に扱うのは無理があるのでは? 泡沫政党が乱立するのは国民にとっても望ましくないでしょう。

 泡沫政党の主張がおかしくて、既成政党の主張のほうがマトモという根拠はどこにあるんですか。誰がどう優劣をつけるの? 共産党の言っていることってそんなにマトモなんですかね? 

――そ、それは……。そういえば、新著『狂った世界』の「まえがき」には次のような文章がありますね。
「日本の社会全体が少しずつ『狂いつつある』感じがします。長い間、私たちが培ってきた良識や常識が音を立てて崩れていっている気がします」
「保守」として良識や常識の立て直しに挑んでいく、ということなんでしょうか。

 そういう考えもありますが、真面目に政策の話をすれば、日本を守りたい、豊かにしたいという気持ちが強いんです。政治に関しては特に経済面での失策のツケは重い。

 30年間、真面目に働いている人の給料が上がらない、それどころか中間層の可処分所得が減っているというのはおかしいでしょう。こんなの江戸時代なら一揆が起きていますよ。

 敗戦でどん底にまで落ち込んだ日本がたった20年でアメリカに次ぐ経済大国になったのに、この30年間は何も上がっていない。

 まずは減税を実現して、それによって経済を上向かせるのが先決だと考えています。減税すると減収になる、結果として将来不安が増すなどとよく言われますが、名古屋市長時代の河村たかしさん(現・日本保守党衆議院議員)は減税を実施して、実際に経済を上向かせて、減収分を取り返していますよ。

――国政政党の代表になって変わったことはありますか?

 相変わらず敵ばっかりですね。それは変わらない。

 選挙中は、同じように保守をうたっている党からも攻撃されました。参政党の党首は、「日本保守党は自民党が参政党をつぶすためにつくった」とかデタラメを言っていたそうです。そんなわけない。

 日本保守党という政治団体をつくっても、私自身にとっては、いいことは何もないですよ。仕事は減る。収入は減る。一方、金はいる。プライバシーがなくなる。自由に発言できない。こんなもの早く辞めたいですよ。でも、政党にはしないと格好がつかない。そう考えてがんばってきたんです。

 結果として、先日の衆院選で得票数の2%を獲得して、結党からたった1年で国政政党としての政党要件を満たせたのは、われながらよくやったと思っています。

 個人の損得でいえばやらないほうが得でしょう。得することは一つもない。ひどかったのはある担当編集者に「日本保守党に投票した?」と聞いたら、「してません!」とハッキリ答えたことやね。

「小説を書いてほしいんで」とか言っていましたが。

――このまま作家に戻らず、政党の代表をやり続けるんですか。

 誰か後継者を育てるまではやらなければ、と考えています。それが終わったら、家で本と音楽三昧の生活を静かにしたいと本気で思っていますよ。

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 百田氏が語る2025年の展望、トランプ大統領への期待については、前編(「韓国とは断交でもいい」 百田尚樹氏が語る「トランプ期待論」と2025年の展望)に詳しい。

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