「何人殺したか覚えていない」…獄中死の“筧死刑囚”が記者に残していた“怖すぎる肉声” 「死刑になるのは当然やろ」
12月26日、大阪拘置所で、筧(かけひ)千佐子死刑囚(78)が病死していたことが報じられた。筧死刑囚は、2012年から13年にかけて、遺産取得の目的で、夫や内縁関係にあった男性2名に青酸入りのカプセルを飲ませて殺害。2007年にも4000万円の借金を逃れるために、知人の男性を殺害しようとした。
彼女は20年間で4人の夫と死別し、他にも結婚相談所を介して6人の男性と交際(すべてその後死亡)した結果、遺産として約10億円を手にしていた。見合い相手はみな60歳以上の男性で、殺し文句は「あなたしかいない」。「後妻業の女」として大きな話題となったのだ。
公判で無罪を主張したが、京都地裁で死刑が宣告。大阪高裁、続いて最高裁でも控訴や上告が棄却され、2021年に死刑が確定している。
デイリー新潮では、判決確定直後の2021年7月21日、大阪拘置所で彼女と面会している。以下、その際の筧死刑囚の発言を再録し、その非道な犯罪を振り返りたい。
(「デイリー新潮」2021年8月14日号記事の再配信です。 文中の年齢、役職、年代等は当時のものです)
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「とっくに死刑の覚悟は出来てます。そんな野暮なこと聞かんといて下さい」
7月21日、大阪拘置所の15番面会室に姿を現した筧千佐子(74)は、こう語りだした。
この数時間後、死刑判決に対する弁護側の訂正申し立てが7月17日付で棄却され、21日までに死刑が確定したことが報じられた。
事実上、彼女の立場は面会時点ですでに「被告」ではなく、「死刑囚」に変わっていたことになる。以下は、千佐子死刑囚が語った現在の心境である。
改めて振り返ると、彼女は4人の男性に青酸化合物を飲ませ、3件の殺人と1件の強盗殺人未遂の罪に問われていた。結婚相談所で出会った交際相手や夫を次々に殺め、多額の遺産を手にしたその犯行の手口から、「後妻業の女」と呼ばれた。
2014年の逮捕時には、年齢より若く見える溌剌とした姿の見合い写真が一斉に報道されている。
面会室に現れた千佐子死刑囚は、逮捕時の若々しい姿は見る影もなく、乱れた白髪が肩下まで伸び、どこにでもいる老婆だった。
そして、椅子に座ると、開口一番、
「私耳遠くなってるし、お互いマスクしているから、声聞き取りにくいので、マスクとって話して下さい」
と、マスクを指差し身振り手振りを交えて告げた。むろん、新型コロナ対策の点からマスクを外すことはしなかったが、はきはきと話すその様子からは、弁護側が主張したような認知症の傾向は微塵も感じられなかった。
弁護側は1審から上告審に至るまで、認知症を理由に責任能力がないなどと主張し、一貫して無罪を求めていた。千佐子死刑囚本人は、法廷で黙秘や殺害否認をすることもあったが、一方で犯行を認める供述をしたこともあった。
彼女の弁護側が行った「判決訂正の申し立て」は、最後の不服申し立ての手段で、訂正が認められることはまずない。
千佐子死刑囚も、
「訂正申し立てっていうのをしてるんですか? 弁護士の先生がなんかやってくれてるんやと思いますけど、私、訂正申し立てって言葉は今はじめて聞いたぐらいや」
と、語り、ペンで紙に字を書く動きをジェスチャーでしながら、
「回答を訂正するとか、間違いを直すって意味の訂正でしょ? 判決の何を訂正することがあるんやろなあ。何を訂正することがあるの、どこに訂正するところがあるんやろと思って、可笑しくなりました」
と笑うのであった。
「私、色んな記者さんからも、裁判でもずっと死刑や死刑やって言われてきて、今更死刑やって言われたかて驚いたりしないですよ。そりゃ死刑やって思ってました。そんな野暮なこと聞かんといて下さい。死刑になるのは当然やろ」
何人もの人間を殺めた報いとして「当然」のことという認識なのかと問うと、
「うん。それはそうです。それだけのことはしてるんやから」
とはいえ、被害者への謝罪の言葉が出てくることはなく、
「そりゃ、この弁護士先生あかんなとか、裁判になったらこっちの言い分通ることなんてほとんどないやろとかね、色々思うことはありますよ。でもそんなん言うたって仕方ないです。私、あなたのお母さんとか、お祖母さんぐらいの年です。今まで散々死刑やって言われてきたのに、今になって死刑やって言われたからって、赤ん坊みたいに“嫌や! 嫌や!”って泣き叫んだり喚いたりしたらおかしいでしょ。そんなことしません」
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