阪神に残った大山は「大正解」、クビをかしげる田中将大と甲斐の獲得…巨人の大型補強にはどこか釈然としない【柴田勲のコラム】

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甲斐の獲得で岸田や大城の出番は減る

 そして甲斐の獲得だ。阿部監督は「絶対的な司令官が欲しい」と自ら移籍を説得したという。契約も5年以上の大型とか。

 なんのために今年、岸田行倫を積極的に使い続けたのか。岸田もよく頑張った。自己最多の88試合に出場した。(※)盗塁阻止率.475は両リーグトップだ。急成長したではないか。28歳、これから円熟味が増していくだろう。甲斐の獲得は飛躍の芽を摘むことになりかねない。

 大城卓三は阿部好みではない。私は彼の長打力は12球団の捕手の中ではナンバーワンだと見ている。今年は起用方法が腑に落ちなかった。

 二人とも面白くないだろう。腐らなければいいが。

 小林誠司は菅野との相性の良さからバッテリーを組んで試合に出ることができた。甲斐の加入によって浮いた存在になる。ソフトバンクは巨人から人的・金銭の補償を得る。小林はプロテクトから外れるのではないか。若手選手が狙われる可能性がある。

 32歳の甲斐を獲得したからには使うだろう。結果、岸田や大城の出番は減る。さらに将来の戦力を失うことにもなりかねない。

ライバルから主砲を引っこ抜くと秩序がなくなる

 巨人は最初、ソフトバンクからFA権を行使した石川柊太投手の獲得に動いたが失敗した。

 さらには阪神の大山悠輔取りを目指した。これを聞いた時にはビックリし、次にはあきれた。

 主砲の岡本和真が近い将来、メジャーに挑戦する意向を固めているという。これに備えてのことなのか。だが、巨人に来てどこを守るのか。第一、巨人対阪神は伝統の一戦と言われるようにライバル球団だ。そのライバルから主砲を引っこ抜く。球界の秩序がなくなる。最終的に大山は阪神に残った。大正解だと思う。

 それよりキャベッジに続く外国人選手を獲得した方がよっぽどいい。エリエ・ヘルナンデスと共に三人を競争させればいい。最も打てる選手を起用するのだ。投手は黙っていても出てくる。巨人にはいい若手がたくさんいる。でも、野手はそう簡単に出てこない。

 久々の大型補強の連発だが、なんか釈然としないね。しっかりした方針はあるのか。

 2024年、巨人は球団創設90周年を迎えた。これから100周年に向かって力強く歩んでいかねばならない。25年こそ巨人には日本一を奪回してもらいたいが、さてどうなるか。

 年の瀬に思いを巡らせている。

 ※参考・2024年の三人の成績:岸田は88試合に出場し打率.242、4本塁打、26打点。大城は96試合に出場し打率.254、3本塁打、27打点。甲斐は119試合に出場し打率.256、5本塁打、43打点。

柴田 勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会理事を務める。

デイリー新潮編集部

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