「性的暴行を受けたのに“PTSDは詐病”とデマを流され…」 元大阪地検検事正が一転して無罪を主張する背景 「刑が軽くなることを戦略的に描いている」

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「信頼していた検察組織から心無い対応をされ続け……」

【前後編の後編/前編を読む】「酩酊した女性部下に無理やり行為を…」 元大阪地検検事正が「無罪を主張」 、事件のカギを握る「ホラ吹き女性副検事」

 突然の無罪主張である。元大阪地検検事正の北川健太郎被告(65)が、部下だった女性検事を相手に起こした性的暴行事件。初公判で罪を認めたはずの彼は、なぜ強気の姿勢に転じたのか。裁判が混迷を深める“元凶”は、ホラ吹き女性副検事の存在だった。

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 前編【「酩酊した女性部下に無理やり行為を…」 元大阪地検検事正が「無罪を主張」、事件のカギを握る「ホラ吹き女性副検事」】では、一転して無罪を主張した北川被告の「理解に苦しむ理屈」について報じた。

 北川被告側の“宣戦布告”ともいえる会見の翌日、性被害を訴えた女性検事も会見を開いた。そこで彼女は、名誉棄損や国家公務員法違反などの疑いで刑事告訴・告発している女性副検事についてこう話したのだ。

「女性副検事や信頼していた検察職員からセカンドレイプの被害まで受け、信頼していた検察組織から心無い対応をされ続け、絶望と孤立感を深め、とても苦しみ続けていました」

 性的暴行事件の捜査の中で、検察は件の副検事にも聴取を行っていた。調書の開示を受けたという女性検事は、その内容について以下のように説明している。

「副検事は、私が被告のことをとても好きで、以前から“被告人と飲み会をしたい”と、ずっとしつこく言っていたので飲み会をセッティングしてあげた、私は飲み会の最中も被告人に対して“ずっと前から被告人のことが好きだ”“チューして”“ハグして”と手を広げるなど、好意を示していたと供述していました」

被害者が被告に好意を持っていたかのように揶揄

 さらに副検事は、懇親会終了後、女性検事が率先して北川被告を官舎へタクシーで送り届けたとも供述。北川被告や女性検事を含めて懇親会の参加者6名中、副検事だけが酒を飲まないので、“自分の記憶が最も正確だ”とアピールしていたという。

「私が被告人のことを好きで、飲み会をセッティングしてもらったというのは明らかな虚偽であり、懇親会での発言も他の同席者が否定してくれて、それらの事実もないと検察庁は認定しています」(女性検事)

 さらに女性検事がショックを受けたのは、副検事による誹謗中傷が大阪地検だけでなく、最高検や東京地検、法務省にまで広まっていたことだった。

 女性検事が信頼していた上司らが、「スジ悪の事件」だと決めつけた上で、「被害者が被告人を“好き、好き”“ラブ、ラブ”と言っていたんだ」などと揶揄していたというのだ。

 結果的に、女性検事は職場で孤立し、PTSDによる病休に追い込まれたと訴えるのである。

捜査情報を漏洩していた疑惑も

「単にうわさ好きの人が“(行為に)同意していた”とか言っているのではなく、副検事はまさに自分が事件関係者であり、事件の真相を知っているという前提で『被害者は酔っておらず、同意していたんだと思う。賠償金も受け取っているのに被害申告している』、あるいは『PTSDは詐病である』などと吹聴していた。それを聞いた人から確認が取れたので、名誉毀損として告訴しています」(女性検事)

 付言すると、女性検事は慰謝料として北川被告から1000万円を受け取ったが、“汚い金”を使うことはためらわれて突き返し、被害を訴え出た。

 また女性検事が開示を受けた前出の調書には、検察の内偵調査中、副検事が捜査情報を北川被告の当時の代理人に対して漏えいしていたことも記されていたという。しかも副検事は、最高検から北川被告との通信履歴やメッセージ履歴を撮影させてほしいと要望されたが拒否。履歴を削除していた記述もあると、女性検事は主張している。

 公判で北川被告が全面的に罪を認めれば、一連の副検事への疑惑も事実として認められる可能性が高まる。

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