ドイツで「シェルター計画」と「新たな兵役モデル」 「2年連続マイナス成長」深刻な不景気への特効薬は軍拡なのか
新たな地下壕計画、兵役モデルの施行
移民問題に加え、「有事への備え」もドイツ政治の中心テーマとなった感がある。
ドイツ政府は11月下旬、ロシアからの核攻撃に対処するため、避難シェルター(バンカー)のリスト化や設置の奨励などを含む新たなバンカー計画に取り組んでいる。ドイツにはかつて約2000カ所のシェルターがあったが、現在使えるのは579カ所のみ。約8400万人の人口に対し、48万人分に過ぎない。
ドイツ政府は軍の規模拡大に踏み切る構えもみせている。ピストリウス国防相は18日、兵士を現在の約18万人から最大23万人にまで増員する可能性があると明らかにした。北大西洋条約機構(NATO)の戦力増強の取り組みが背景にある。
だが、徴兵制が2011年に停止された後、軍は人員の確保に苦労しており、現時点では目標を約2万人下回っている。
ショルツ政権は6日、兵員確保に資する新たな兵役モデルを閣議決定し、来年5月の施行を目指している。新たなモデルでは、アンケートを元に4~5万人を徴兵検査に呼び、そのうち5000人に少なくとも6カ月の基礎的な軍事訓練に従事するよう促す。参加者には最大で月額2000ユーロ(約32万6000円)を支給する予定だ。
自動車から防衛へ“鞍替え”も
政府の軍拡にドイツ産業界も反応し始めている。
電気自動車(EV)の需要低迷と、中国との競争激化で苦戦を強いられるドイツ自動車業界には、リストラの波が押し寄せている。そこに、特需に沸く防衛産業から救いの手が差し伸べられた。
例えば、ミュンヘンに拠点を置くレーダー・光電子工学メーカーのヘンゾルトは、軍事関連の受注急増に対応するため自動車部品企業2社からチームを丸ごと雇い入れる交渉を進めている(12月14日付ブルームバーグ)。
深刻な不景気への特効薬は軍需しかないのもしれない。
このように、来年のドイツ政治は波乱含みだ。今後の動向についてこれまで以上の関心をもって注視すべきだろう。
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