松本人志の影響力を感じさせた令和ロマン、「うまい」より「好き」と言われるバッテリィズ 人間としての総合力を見る大会となった「M-1グランプリ」

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バッテリィズが証明した「うまい」より「好き」と言われることの強さ

 一方、最も爪痕を残したコンビはバッテリィズだ。「アホの子に教える」体裁の漫才といえば錦鯉のスタイルとボケの長谷川雅紀さんの存在感がよぎるが、バッテリィズでもボケのエースさんが光っていた。おバカで元気で憎めない、少年ジャンプの主人公みたいなキャラは会場を一気に魅了。

 審査員サイドも同じだったようで、まずMCの今田さんが「アホやなあエース、楽しそうやなあ」とねぎらうと、若林さんも「ワクワクするバカが現れた」とコメント。山内さんも「エースのバカな感じを開始15秒で気付かせて引きずりこんだ」、博多大吉さんは「長らく途絶えていたアホの漫才をよみがえらせた」と、とにかく「アホ」「バカ」という芸人として最大級の賛辞を全員から贈られていた。海原ともこさんの「小難しい漫才が多い中、ずーっとへらへらできる」とのコメントに、深くうなずいた視聴者も多かったに違いない。

 お笑いを審査することは難しいといわれながらも、審査員の面々は緩急のつけ方やペース配分、構造の粗(あら)をきちんと指摘し、点数の理由を説明する。でも結局のところ、そうした技術のうまい下手を吹っ飛ばしてしまうほど、「好き」になれるお笑いかどうかというのは一番大きいのではないだろうか。

 その「好き」を最も左右するのが、芸人からにじみ出る雰囲気や人間性なのだろう。こればっかりは努力や戦略ではどうにもならない。中川家の礼二さんが昨年大会で「存在感がある」と褒めたのは令和ロマンのくるまさんとヤーレンズの楢原さんだが、やはり今年もこの二人の「場の空気を変える力」は抜きん出ていた。ただし、くるまさんは今田さんから「全体的に偉そう!」とツッコまれ、ともこ姐さんや山田邦子さんからは「動かなさそうな人」と、ちょっと気取った人間に見えていたよう。ヤーレンズもまた「鼻につく」コンビという前振りをされている。決勝の「見せ算」で議論を呼んださや香も、不仲を公言していることもあって異様さが際立っていた。

 対して今年、個人的には柴田さんの審査員コメントが印象に残っている。バッテリィズを「素直」、エバースを「優しさがにじみ出ている」と褒めていた。「爆発力」というとボケの手数やツッコミの勢いに目が行きがちだが、実力が伯仲する決勝において、「応援したい」と会場が後押ししたくなる大きなうねりを生み出せるかどうかは大きい。ネタ披露後も含めてのスケールの大きさというか、最後は本人たちの姿勢や人間性が大きく影響すると言いたかったのではないか。バッテリィズやエバースに、結果が出た今もSNS上でエールを送るコメントは絶えない。

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