バツイチ女性と結婚、産まれた息子が「自分に似ていない」 悶々とする44歳夫の前に前夫が現れ告げたコト

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常識外れはわかっているが

 栄一朗さんはそう言って苦笑した。本来は敵といってもいいはずなのに、お互いに理解ができるようになって敵視するのもばかばかしくなったという。

「不倫公認というわけでもないんですが、みんなが幸せになるには、それぞれが少しずつ痛みを抱えていくしかないよね、という感じかなあ。その話が出たころ、義母が急逝したんですよ。昨日まで元気だったのに、朝、ベッドの中で冷たくなっていたそうです。人はいつそうなるかわからない。それも僕の決断に大きな影響を与えました。美都と圭司さんと僕と、3人、いつ死んでも後悔のないようにしたい。そんな気持ちもあって、この生活になったんです」

 常識外れはわかっていると栄一朗さんは言う。だが、今のところ誰かに迷惑をかけているわけでもない。大人3人が責任をもって、この関係を続けていこうと決めたのだ。そして、彼は息子が自分の子だとわかったことでホッとしたとも語った。

「いや、でも今なら、たとえ息子が圭司さんの子だとしても、僕と息子の関係は変わらないと自信をもって言える。こんな選択をしたせいか、常識外れでもいいんだ、常識の外に幸せがあるかもしれないと思えるようになったんですよ」

 それがいいか悪いかはわからないけど、少なくとも僕らはいい着地点を見つけたと思っていると彼は力強く言った。

「これから美都と子どもたちとで中華料理を食べに行くんです。最近は子どもたちがたくさん食べるから経済的に大変で……」

 そう言いながら去っていく彼の足取りは妙に軽かった。

 谷崎潤一郎VS佐藤春夫のようなことにはならずにすんだのは、3人が冷静に判断し、真ん中にいる美都さんの意志がしっかりしていたからだろう。男ふたりが勝手に物事を決めた時代とは違うのである。

 ***

 傍から見れば奇妙な三角関係だが、現在は絶妙なバランスの上に成り立っているようだ。そもそものきっかけは「300万円で美都さんを譲る」という圭司さんの申し出だった――の経緯は【前編】で詳しく紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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