バツイチ女性と結婚、産まれた息子が「自分に似ていない」 悶々とする44歳夫の前に前夫が現れ告げたコト
「息子ちゃんはママ似なのかな」
息子が小学校に上がった5年ほど前、近所の人やママ友から「息子ちゃんはママ似なのかな。パパには似てないわね」と立て続けに言われ、彼は違和感の正体を受け止めざるを得なくなった。
娘は鼻の形や指などが栄一朗さんに似ていたし、性格的にも違和感がなかった。だが、息子にはふっと「他人」を感じるときがあった。そもそも骨格が自分とは似ても似つかない。部分的に似ているところも見いだせない。性格は素直なのだが、妙に頑固なところがあり、それも彼や美都さんの想像を超えるものだった。だがまだ子どもだ。しかも似ている似ていないは主観的なものが大きいし、息子は誰より彼に懐いていた。息子が最初に発した言葉は「パパ」だった。あのときの感動を、栄一朗さんは忘れてはいなかった。だがその半面、疑惑がふつふつとわいてくる。
「疑念をもつ僕がいけないんだと思っていました。美都の前の結婚のことだって、僕は水に流して結婚した。あの男からきちんと奪い取った妻なのだから、僕が信用しないでどうするんだと……」
妻を疑ったり試したりしてはいけないと…
それでも沸いてくるのが疑念というもの。いっそDNA鑑定をとは思ったが、大事な妻を疑ったり試したりしてはいけないと自分を戒めた。
「美都の言動に不信を抱いたことはなかったけど、疑念が濃くなると、彼女が残業といっても実は男と会っているのではないかと、さらに妄想が広がっていくんですよね。その妄想だけが暴走していくような気がして、自分で自分が怖かった」
幸せすぎて怖いのだと自分に言い聞かせた。平和な家庭を守るためには何でもしようと決めた。
昼過ぎに帰宅すると、美都さんと…
ところが2年前、あの男が目の前に現れた。美都さんの前夫の圭司さんだ。たまたま栄一朗さんが出勤後、体調が悪くなって早退したときのこと。昼過ぎに帰宅して玄関を開けたら話し声が聞こえた。美都さんは彼より早く出社していったし、子どもたちは学校だしと思いながらリビングに入ると、美都さんと圭司さんがソファで寄り添っていた。
「固まりました。もちろん、美都も圭司さんも固まっていた。何やってんのと言ったような記憶があります。圭司さんはおろおろしてた。あのとき僕を脅した彼とは、すっかり印象が変わっていた。美都は『違うの。たまたま街でバッタリ会って』と言ったものの、あとが続かない。何度もこうやって家に入れていたのか、おまえら、どういうつもりなんだと、日頃の自分からは想像もつかないような汚い言葉が次々出てきました」
わかった、栄ちゃん、落ち着いてと美都さんが言った。と同時に、ガバッと圭司さんが土下座した。
「申し訳ない。美都を譲ってほしい、と。300万円は返すからって。何がなんだかわからなかった。僕の後頭部でブチッと音がして、圭司さんに殴りかかりました。人を殴ったのは生まれて始めてだった。圭司さんをバシバシ殴ったのに、彼は反撃してこなかった。鼻血が出ているのに気づいてやめたとき、僕の右手は真っ赤になっていた」
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