2年交際の恋人は“人妻”だった… 「譲ってやるから金払え」と夫から提示されたお値段は

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「私、結婚してるの」

 中堅企業だが将来の展望に夢をもてる会社に採用してもらえたときは、とてもうれしかったと栄一朗さんは言う。

「仕事を始めて1年たったとき、妹はお金も貯まったし留学するって。その前に紹介したい人がいると、女性を紹介してくれました。『この人なら、絶対、栄ちゃんに合うから』と。妹は大人になってからは、僕をおにいちゃんなんて言ってくれたことがなかった。やっぱりどこかでバカにしていたんでしょうね、子どものころと同じように」

 紹介された美都さんは、彼より6歳年上の29歳だった。年上の女性を紹介するなんてとムッとしたが、会ってみると妹ほど強烈ではないにしても、てきぱきしていて自分の意見をやんわりとだがはっきり言うタイプ。何度か会ううちに、どうやら彼は「手のひらで転がされる快感」を覚えたようだ。

「ただ、2年後に彼女が衝撃の告白をしたんです。『黙っていてごめんなさい。あなたの妹さんも知らないことだけど、私、結婚してるの』と。はあ? 何を言ってるのという感じでした。僕はそろそろ結婚を考えてもいいなと思っていたときだから、会社を欠勤するほど落ち込みました」

「あんた、美都と結婚したいの」

 妹はすでに海外に行っていて話もできない。美都さんが言うには、22歳のころ大恋愛して盛り上がった3歳年上の彼と同棲を始め、その半年後には婚姻届を出した。ところが結婚すると彼はほとんど帰ってこなくなった。帰ってこないなら別れると連絡すると帰宅する。一晩中、彼女を抱いて「オレにはおまえしかいない。でもオレは夢を実現させるためにがんばってるんだ」とささやき続ける。彼に惚れ込んでいた美都さんは、それで彼を許してお金まで渡す。そんなことの繰り返しだった。

「腐れ縁を切るしかないんだけど、その勇気が出なかった。でも栄ちゃんと知り合ってからは、あなただけと美都は言いました。僕は、自分の力で彼女を奪い取ろうと思った。彼と話をつけるからとかっこつけちゃったんですよね」

 相手の男、圭司さんに連絡をとり、ふたりだけで会った。栄一朗さんより9歳年上だから、当時、30代半ば。がっちりした体躯にサングラス、会うなりビビったと栄一朗さんは振り返る。

「それでもきちんと話をつけようと思ったんです。美都の名前を出すと『あんた、美都と結婚したいの』って。はいと言うと、『じゃあ、譲るよ。300万くらいでどう』と。妻をお金で売るんですかと言ったら、慰謝料だよ、弁護士たててもいいけどねとニヤリとして。100万くらいしか持ってなかったから、残りのお金は会社で借りると伝えました。本当はぶんなぐってやりたい、オレは美都に心底惚れてるんだからと、本当か嘘かわからないことを言ってさんざん脅されました」

 栄一朗さんは言葉通り、会社に「結婚資金が足りない」と言って200万円を借り、圭司さんに渡した。

 ***

 こうして美都さんを“手に入れた” 栄一朗さんだったが、その後の結婚生活は意外な展開に……。【後編】で詳しく紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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