2年交際の恋人は“人妻”だった… 「譲ってやるから金払え」と夫から提示されたお値段は
寮生活で学んだ“男女の機微”
東京の暮らしには慣れなかったと彼は笑う。人が多すぎる、簡単に山にも海にも行けない、物価は高いと生活しづらいことばかりだった。
「サークルにも入ろうと思ったんですが、みんなキラキラしていてオリエンテーションに行っただけで疲れて発熱してしまいました(笑)。大学を出たら、Uターンして地元で就職するつもりだったから、東京になじまなくてもいい。学業とアルバイトに精を出し、あとは寮に帰るだけ。夏前にはそういう生活が定着しました」
顔見知りになった学友たちもいるが、彼らと食事に行くこともなかった。無駄なお金は使えない。寮は4人部屋だったが、そのころすでに寮に入る人も減り、彼はたまたまひとりで部屋を使うことができた。それを知った先輩が、「彼女とゆっくり話をしたいから、部屋を貸してくれ」と頼み込んできたこともあった。アルバイトを入れて深夜に部屋に帰ると、先輩からお礼にと3000円もらった。
「それでときどきそうやって部屋貸ししましたね。別の先輩は焼肉屋に連れていってくれました。だったらホテルに行ったほうがいいような気もするんだけど、彼は『女に泊まりたいと言われたら困るだろ。ここなら女はすぐに帰るからさ』って。好きでつきあっているのにおかしいなと思ったけど……。純だった僕が、いろいろな男女の機微を見たのがあの寮生活だったかもしれません」
上京してきた妹
そんな栄一朗さんでも、同級生から告白されたことがある。あまりに意外だったからすぐに返事はできなかったのだが、寮の先輩に相談したところ、「つきあってみろよ」と言われた。中学、高校時代はほのかな片思いしかしたことがなかったから、女性とつきあうのがどういうことかわからなかったが、つきあうと返事をした。
「映画を観ようとかごはんに行こうとか、彼女から常にデートの誘いがありました。でも僕はアルバイトをめいっぱい入れていたから、あまり時間がない。講義のあとに彼女と学食で自販機のコーヒーを飲んで20分たったらバイトがあるからと去っていくような感じになっちゃって。2ヶ月でフラれました。当然ですよね」
姉は4年間、ずっとボーナスを全額送ってくれた。父は勤めのかたわら、週末はアルバイトもしていたようだ。
「僕が2年生のとき、妹が上京してきました。妹は推薦で有名私大に合格、しかも返済義務のない奨学金までとれたんです。しかも上京して半年後には水商売で、かなりいい収入があったいみたい。学費や生活費の不足分はよく妹が出してくれました」
要領よく生きている妹を羨ましいと思った。アルバイトで疲れているせいか、大学の成績もふるわない。妹は遊びながら生きているように見えて、成績も抜群だった。それでも実直にがんばるのが自分の性格上、いちばんいいと栄一朗さんは信じてがんばっていた。
「Uターンして就職するはずが、結局、東京で就職しました。地元には入れる会社がなかったし、どうせなら東京でがんばれとも親に言われて。根本的にはなじめないけど、あまり人に立ち入らない東京のありようも悪くはないと思い始めていました。妹の影響も大きいですけどね」
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