「ブスな顔のぬいぐるみは買わない」ディズニー限定グッズを買い占めるグループに密着 大量購入する驚愕の手法

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個数制限はあるが…大量購入するその手法

 劉姐が筆者を呼ぶ声が聞こえた。声の方に目をやると、彼女がレジ台の近くで手招きをしている。駆け寄ると、レジ台のスタッフは筆者の姿を確認してから、会計をはじめた。

 購入個数制限のあるグッズを買う際には、客の人数を目視で確認しているようだ。劉姐がレジに差し出した買い物カゴの中には、2人分の会計としなければ買えない個数の限定グッズが含まれていた。

 これが、彼女らが20人分のチケットを所持していながらも、同じ時間帯の予約枠を一気に取得しない理由だ。20人分のスタンバイパスを同じ予約枠で取ったとしても、購入時に人数確認をされると、最大でも、実際のメンバー数である5人分の個数しか買えなくなってしまうのだ。

 梓梓と小静のような個人転売ヤーが集団で買い付けにくるのも、購入個数制限への対策が一番の理由だ。今回のように集団で買い付けに来て総力を上げてスタンバイパスを取り、取れたパスを互いに融通しあうほうが効率がいいのだ。

 劉姐の会計金額は、10万円を少し超えていた。彼女は長財布から取り出したクレジットカード1枚で支払う。

 レジ台のスタッフからクレジットカードを返却されると、劉姐はなぜか一緒に受け取ったレシートでカードを包むようにして、長財布とは別のカードケースに仕舞った。

「買い付けの時に一度使ったカードは、次使うまでに少し時間を空けるようにしている。同じお店で何度も高額決済していると、不正利用されていると判断されて、ロックされることがある。その度に電話でロック解除してもらうのは時間の無駄なので、買い付けには10枚くらいカードを持ってきている。日本のクレジットカード2枚と、中国の2枚。あとはぜんぶデビットカード。外国人はクレジットカードの審査が厳しいから」

 梓梓と小静もそれぞれ6万円程度購入し、店の外へ。それも束の間、筆者と阿麗が入れ変わるかたちで、4人はまた店に入って行った。

転売ヤー見習いの夢

 ベンチで待機している蒋偉の元へ行くと、ノートパソコンを出して何やら作業をしていた。

「大学の卒業論文の下書きをしています。テーマは『電気自動車が生み出すビジネスチャンス』について」

 彼は卒業後も日本に住み続けることを希望しているという。もともとは不動産業界への就職を考えていたこと、しかしすでに就職活動を中断したことなどを話してくれた。

「じゃあ卒業後どうするの?」

 筆者の質問に、彼は即答した。

「転売やります。しばらくは劉姐さんの会社で働いて、資金が貯まったら独立します。転売から少しずつ会社を大きくして、いろいろなものを扱う貿易会社にしたい」

「そんなに長く転売で儲けられるかなぁ」

「世の中から転売は無くならないですよ。転売が良くないこととされている日本では逆に、ビジネスチャンスがいくらでもある。やりたがる人が少ないですから。もしディズニー転売が廃れても、日本はコンテンツ産業やファッション産業が盛んですし、限定品として販売される商品がなくならない限り、転売は儲かりますよ」

 劉姐に窘められてばかりで頼りない印象だった蒋偉からの、予想外の反駁に筆者は少し狼狽えた。

 その後も2人で雑談をしているうちに、4人の女性転売ヤーは店を2回転して帰ってきた。これでこの店での買い付けは終了だ。持参したビニールバッグは、どれももうこれ以上はほとんど何も入れられないほどに、パンパンにふくらんでいた。

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 この記事の後編【転売ヤーがディズニーランドの「使用済みのチケット」を1000円で買い取る驚愕の理由】では、ディズニーに「年間20億円」の売上をもたらす転売の実態について報じている。転売行為を助長させている加害者は誰なのか――。

『転売ヤー 闇の経済学』より一部抜粋・再構成。

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