なぜIT企業は“フルリモートから撤退”するのか? 表向きの理由は「社員のコミュニケーション不足」でも、企業の本音はより深刻な「コンプライアンス問題」

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 ITmedia NEWSは12月13日、「LINEヤフーがフルリモート縮小 事業部門は原則週1回、それ以外は月1回出社に」との記事を配信した。他のメディアも詳報を行い、Xは“プチ炎上”となった。そもそもの発端は2022年4月、LINEと合併前のヤフーが国内の従業員約8000人に対して居住地の制限を撤廃したことに遡る。通勤交通費の上限から「片道6500円まで」のルールが撤廃され、国内ならどこに住んでもOKという方針が示された。

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 担当記者は「沖縄や北海道など、東京から遠い観光地に住みながら働けるのはうらやましいという、やや軽薄な受け止めも相当な数に上りました。しかし、もっと深刻な社会問題、例えば親の介護という観点からLINEヤフーの取り組みを高く評価する動きも顕著だったのです」と言う。

「地方から上京して大学に通い、そのまま都内の会社に就職した人は、故郷に年老いた父母を残していることも少なくありません。家庭の事情から自分が親の面倒を見ることになれば、従来型の勤務先だと退職する必要がありました。実際、『介護離職』という言葉は厚生労働省の公式サイトでも取り上げられています。その点、LINEヤフーのフルリモート制度を活用すれば、故郷の実家で生活し、親の面倒を見ながら働くことも可能です。優秀な人材を失うリスクが減ると、経営や人事の専門家もメリットを指摘していました」

 時代のニーズに対応した働き方改革だとLINEヤフーは絶賛されていたのに、その方針が変わってしまった。たちまちXでは激論が繰り広げられ、フルリモート縮小に理解を示す意見も相当な数に上ったことは事実だ。しかしながら、ここではまず批判的な意見をご紹介しよう。(以下、原文ママ)

「人事権の濫用」という指摘も

《自分たちの都合でのフルリモートやめて出社とか迷惑だから辞めて欲しい》、《フルリモートを魅力に入社した人からすると裏切りだー!って思う気持ち今はわかる(略)間接的なリストラか?》、《社員を奴隷としか考えてないし、働き方まで支配したい経営者のエゴが満載だな》──。

 LINEヤフーの方針転換は「朝令暮改」、「ちゃぶ台返し」だと批判された。同社は引っ越し費用の補助を検討するなど、従業員の負担を少しでも軽くしようと努力はしているようだ。とはいえ、《突然一律に定期的な出社を求めることは人事権の濫用であると解釈される》という専門家の見解もXでは拡散した。

「一方、アメリカの大手IT企業のうち、Google、Apple、Amazonの3社はフルリモートを廃止しています。Xのオーナーであるイーロン・マスク氏はリモート勤務を『道徳的に間違っている』と強く批判するなど、もともと在宅勤務を異常なほど敵視していることで有名です。背景として指摘できるのは、まずコロナ禍が落ちつき、出社による感染リスクが低下したことが挙げられるでしょう。さらにフルリモートは社員同士のコミュニケーションを不足させるという専門家の指摘も目につきます。出社した社員がオフィスで雑談を交わすと精神的にはプラスの効果があり、仕事の質や生産性が高まるというのです」(同・記者)

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