韓国戒厳令、「第2次朝鮮戦争」寸前の危機だった? 韓国メディアが報じている“衝撃シナリオ”の全貌

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北朝鮮は以前から察知か

 とはいえ、ユン大統領の意を汲むキム前国防相が主導して汚物風船の発射地点を攻撃する戦術的な討議が行われたことは事実のようだ。野党の共に民主党はキム前国防相が北朝鮮の汚物風船による挑発を口実に北朝鮮との局地戦を引き起こし、非常事態を誘発しようとしたとの疑惑を提起しており、朝鮮日報は「この疑惑が事実であればキム前国防相 が南北間の緊張を意図的に高めることで非常戒厳の正当性を確保しようとした可能性があると指摘されている」と報じている。

 仮に本格的な戦闘にエスカレートした場合、在韓米軍や隣接する中国、ロシアを巻き込んだ“第2次朝鮮戦争”に発展しかねない非常事態となる。1950年から53年まで続いた朝鮮戦争は現在、休戦協定下にあり終戦には至っていない。それだけに局地的衝突だけで終わる保証はどこにもない。

 ただし、北朝鮮はユン大統領の戒厳クーデター計画をかなり前から察知していた可能性は高い。ユン大統領は8月にクーデターに意欲を見せるキム氏を国防相に抜擢しその後、戒厳令が本格的に検討されたという。野党は国会で「ユン大統領が戒厳令を宣布することはあるのか」と何度も追及しているため、それに北朝鮮が気付かないはずはないからだ。

 万が一の事態に備えるためか、北朝鮮は有事の際の相互軍事支援などを明記したロシアとの包括的戦略パートナーシップ条約を、12月4日に発効させている。不思議なことに朝鮮労働党機関紙・労働新聞は、憲政の秩序を守るとしてユン大統領が3日に非常戒厳を宣言した後の4日以降、韓国の動向をまったく伝えなくなった。

 現地の政治ジャーナリストは「第2の戒厳令を防ぐため韓国側を刺激するのは得策ではない、との判断から自制したようです。北朝鮮はウクライナに侵攻したロシアに大規模な兵力を派遣しているため国内兵力が不足していることも理由の1つです。12月11日になってようやく朝鮮中央通信が、非常戒厳を巡る韓国内の抗議デモや政治的混乱に初めて言及しました。相次ぐ軍高官の逮捕や急ピッチで進む捜査を見て攻撃を受ける可能性は低くなったと見たのでしょう」と分析。そのうえで、「北朝鮮はロシアと軍事同盟を結んでいるため、ユン大統領の命令で韓国軍が北朝鮮領土を攻撃した場合、ロシア軍とも交戦となる危機的事態になるところでした」と振り返る。

 結局、ユン大統領が企図した北朝鮮への攻撃計画は、軍内部高官の消極姿勢で頓挫。非常戒厳令も宣布から約3時間後、一部軍隊の厭戦気分や韓国国会(定数300)の動議可決によって無効になった。ユン大統領も受け入れざるを得ず戒厳令はわずか6時間で撤回された。

「国内外のメディアはユン大統領弾劾を求めるK-POP集会の平和的光景を繰り返し報道していますが、北朝鮮への攻撃が実行されていたら韓国内は戦慄のパニック状態になっていたでしょう。日本政府も在韓日本人の救出移送をめぐって混乱は避けられなかった。ユン大統領に対する一刻も早い本格的捜査が必要です」(前出の現地ジャーナリスト)

 出頭要請を拒否し続けているユン大統領。取り巻きはほとんど逮捕されてしまったが、今後どうなるのだろうか。

デイリー新潮編集部

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