「阿部監督」“超大型補強”の背景に「山口オーナー」との“蜜月” 「ナベツネ=長嶋」路線復活の“大盤振る舞い”に歯ぎしりをする「元監督」とは

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ナベツネ―長嶋の関係

 こうした動きを見ると、思い起こさせるのが、かつての「ナベツネ―長嶋茂雄」の関係である。

 日本では1993年オフからFA制度が導入された。今回の甲斐の獲得で球界最多の29人もの選手を獲得してきたのが、ほかならぬ巨人である。

 制度導入の当時、チームを指揮していたのは長嶋監督だった。FA補強の第1号となった落合博満を筆頭に、川口和久、広沢克己(現・克実)、清原和博、工藤公康、江藤智ら他球団の「4番」と「エース」を中心に根こそぎ補強を続けてきた。その長嶋監督には、当時の読売グループの最高権力者で1996年から巨人のオーナーになった故・渡邉恒雄主筆との強力なホットラインがあった。落合の獲得意思を聞いていた渡邉主筆は「ウチ(巨人)なら5億円出す!」と豪語するなど、ミスターの「FA戦略」を徹底的に後押しした。

 渡邊主筆と長嶋の関係は絶対だった。

「渡邊さんは常々、“長嶋は総理大臣より偉いんだ”と言ってきました。長嶋=巨人人気によって、読売は発行部数第一位の巨大メディアへと成長した。そのことへの感謝の念は強く、時に長嶋さんの弾除けにもなってきました。一方の長嶋さんも一次政権時に監督を解任されて以来、長い浪人生活を送っていましたが、渡邊さんが監督に招聘したことで、再びユニホームを着ることが出来た。このことに深い恩義を感じていました」

阿部監督の強い希望

 巨人は当初、田中投手の獲得は消極的だった。今季15勝してMLBボルチモア・オリオールズへの移籍が決まった菅野智之投手の穴埋めが必要だったが、桑田真澄二軍監督は、自身が2021年巨人の一軍投手コーチ補佐として復帰してから「3か年計画で若手投手の育成をしてきた」と自負していた。戸郷翔征、大勢、井上温大の3投手が侍ジャパンに選出されたこともあって「(菅野が)抜けた穴は十分埋まる」と自信いっぱいだった。

 しかし、それでも田中の獲得に動いたのは、2009年のWBCで田中の球を受けたこともある阿部監督の強い希望と、それを後押しした山口オーナーの存在だった。

 来オフには不動の4番・岡本和真もMLB移籍が濃厚だ。その後釜となる日本人大砲の獲得は必須になる。19日、渡邊主筆が死去し、山口オーナー(読売新聞グループ本社代表取締役社長)は名実共に読売グループの最高権力者となった。オーナーと監督が盤石のタッグを組む“日本球界の盟主”巨人は、今後もセパ問わず他球団から主力を奪い取る大補強路線を邁進していくことになりそうだ。

小田義天(おだ・ぎてん) スポーツライター

デイリー新潮編集部

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