韓国・尹大統領失脚で「反日」の悪夢が再来…李在明政権誕生で「徴用工」「佐渡金山」「竹島」問題が急転回のリスク

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 いまだ大混乱が続く韓国政界。次期大統領候補として名前が挙がる、最大野党「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)代表は「反日闘士」として知られる。仮に李政権が誕生すれば、日韓関係にどのような影響があるのか。外交政策が大きく転換されるだろう、行く末を予測する。(金敬哲/ジャーナリスト)

「親北反米、親中反日」

 韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権が戒厳令の余波で失脚し、次期大統領候補となる最大野党『共に民主党』の李在明代表に大きな注目が集まっている。64年、慶尚北道安東(キョンサンブクド・アンドン)出身の李在明氏は、少年工出身の下克上政治家としてよく知られ、「親北反米、親中反日」との政治的主張を持つ人物として有名だからだ。

 李代表が大統領に就任すれば、韓国の外交姿勢が大きく転換することは明らかである。

 まず、韓国は代表的な親米国家である。李代表が政権を握るとしても、対米外交の政策転換は容易ではない。一方、対日外交は現政権の基調とは180度変わることになる。来年1月に大統領に就任するアメリカのトランプ氏は、日米韓の協力をバイデン政権ほど強調するとは思えず、そのため、仮に李政権が誕生すれば、過去の文在寅(ムン・ジェイン)政権と同様、歴史問題や独島(竹島)の領有権などをめぐり、「日本に言うべきことは言う」という立場を堅持するはずだ。すると、日韓関係は急速に冷え込んでいくことになる。

 尹政権の対日外交は、「日韓両国が歴史問題を乗り越えて未来を志向しなければならない」というのが基本スタンスだった。そのため、文政権時代に日韓協力の足を引っ張っていた歴史問題に対して大きな譲歩をした。

23万人の徴用工遺族

 代表的なものとして挙げられるのは、2つ。徴用工賠償判決で日韓企業が自発的な基金を集めて返済するという「第三者弁済案」を提示したこと、佐渡金山のユネスコ世界文化遺産登録に対しても同意したことだ。しかし、この2つの政策は、野党や進歩勢力だけでなく、多くの韓国国民から「屈辱外交」と批判され、尹大統領の支持率にも多大な悪影響を及ぼした。李代表をはじめとする「共に民主党」が先頭に立って反対世論をリードしただけに、李政権発足となれば、この問題が真っ先に日韓の懸案として浮上する可能性が高い。

 李政権で第三者弁済案が撤回されれば、徴用工賠償問題は文在寅時代に逆戻りする。 文政権時代、韓国裁判所の最終審で勝訴した徴用工の遺族たちは、日本企業が所有する韓国国内の財産に対する差し押さえと強制売却を要請している。実はこの件はいまだに最高裁に係留されており、もし、強制執行が行われれば、日韓の国際紛争に発展することになる。

 韓国メディアによると、第三者弁済案を提示した2023年3月当時、韓国最高裁で最終勝訴した原告側は15人。しかし、その後52人が追加され、そのほかにも現在、50件余りの徴用工に関する訴訟が進行中だ。原告側の訴訟を手伝っている市民団体は、賠償訴訟が可能な徴用工遺族がなんと23万人に達するとしている。日韓関係が悪化すれば、この問題は大きな爆発力をはらんだ火種となり得るのだ。

 佐渡金山の世界文化遺産登録についても、韓国国内では「日本から不意打ちを食らった」という世論が圧倒的だ。韓国政府が日本の佐渡金山の登録に反対しない代わりに、佐渡市に朝鮮半島出身の労働者に関する歴史展示を行い、毎年追悼式を開くという合意があった。

 しかし、韓国国内からはすでにユネスコへの登録取り消しを要求すべきだという声も出ており、「佐渡金山の真実を知らせるキャンペーン」を行う市民団体も出てきている。李政権も、このような国民の反日感情に便乗する可能性が高く、毎年行われる佐渡金山の追悼式は、日韓政府の衝突の場になるだろう。

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