「年金で豊かな生活が送れるとは思わない方がいい」「年金カットを避ける“裏ワザ”は」 制度改革であなたの年金給付額はどうなる?

国内 社会

  • ブックマーク

「本当はもっと払える高齢者が多くいる」

 在老の見直しを巡って必要となる財源については、標準報酬月額の上限を引き上げる案も検討されている。

「厚生年金保険料は、その人の標準報酬月額によって等級別に決まっています。現在は月額65万円が上限で、以降は80万円稼いでいようが100万円稼いでいようが保険料は変わりませんでした」(社会保険労務士の北村庄吾氏)

「標準報酬月額65万円に該当する人は、全体の6.5%の278万人と一番多い。本当はもっと高い保険料を払えるのに、上限の等級になっている高所得者が多くいるということです」(前出・井戸氏)

 現在検討されているのは、上限を65万円から75万円、79万円、83万円、98万円のいずれかに引き上げる案である。

「現役世代1.2人で高齢者1人を支えることに」

「厚労省の最優先課題は年金制度の維持です。そのためには、より多く保険料を集めるのが手っ取り早い。『106万円の壁』の撤廃と同じ流れで理解するのがいいと思います」

 北村氏はそう解説する。

「2055年には現役世代1.2人で高齢者1人を支える時代が到来するといわれています。年金制度は賦課方式を取っているため、その財源は主に、現役世代の会社員などが会社と折半して払う社会保険料と国庫負担などで成り立っています。現役世代1.2人で高齢者1人を支えることになると予測される中、この仕組みで対応できるのか。疑問を覚える方は多いはずです」

「年金で豊かな生活が送れるとは思わない方がいい」

 年金は、主に現役世代が支払う保険料で高齢者世代への支給を賄う「賦課方式」が取られており、これまでに余った分は積立金として年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用。23年度の積立金は厚生年金が約243兆円、国民年金は約12兆円となっている。しかし、

「これは使うことはできないのです。団塊ジュニアが全員年金受給者になる『2040年問題』が迫っているからです。厚労省はそのタイミングから積立金を取り崩して対応するとしています」(北村氏)

 高齢者を支える人数は激減し、さしあたって積立金も使えない、となると、

「これから年金が増えるというのはあり得ない。年金で豊かな生活を送れるとは思わないほうがいいでしょう。年金制度を存続させるためには給付額を抑制していくしかないからです」(同)

次ページ:健康寿命から考える

前へ 1 2 3 次へ

[2/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。