「年金で豊かな生活が送れるとは思わない方がいい」「年金カットを避ける“裏ワザ”は」 制度改革であなたの年金給付額はどうなる?

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厚生年金が全額カットというケースも

【前後編の後編/前編からの続き】あなたの年金給付額はどうなる?「サラリーマンが損をする」は本当? 年金制度改革で知らないと損をするポイント

「106万円の壁」撤廃、基礎年金の引き上げ、在職老齢年金制度の見直し。最近、年金を巡るニュースが散発的に報じられているが、それらを体系的に理解できている人はあまりいないのではないか。複雑極まる年金制度改革についてどこよりも分かりやすく解説する。

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 前編【あなたの年金給付額はどうなる?「サラリーマンが損をする」は本当? 年金制度改革で知らないと損をするポイント】では、年金制度改革の概要について報じた。

 制度の崩壊を招かないためには、保険料を納める人、つまり働く人を増やすしかない。そのため、厚労省は「106万円の壁」撤廃だけではなく、「在職老齢年金」(在老)と呼ばれる制度の見直しも検討している。在老とは、働く年金受給者が得る賃金と厚生年金の合計が月50万円を上回ると、超過分の半額がカットされる仕組みである。削除されるのは基礎年金を除く厚生年金部分だ。

 年金問題研究会代表(1級DCプランナー)の秋津和人氏が言う。

「厚生年金は65歳から受給すると、月に10万円前後もらえます。仮に厚生年金が10万円だとすると、月給40万円を超えると年金カットの対象にあてはまります。例えば、月給60万円の人だと、超過分20万円の半額は10万円。つまり厚生年金が全額カットということになるのです」

年金カットを避ける“裏技”

 現在、年金受給権を持ちながら働いて賃金を得ている65歳以上の人は308万人で、そのうち16%の50万人が在老の対象となり、年金をカットされているという。

 社会保険労務士の井戸美枝氏が話す。

「在老の50万円のラインにひっかかるのは、大手企業の役員とかファンドマネージャーなど。もちろん在老調整がなく、年金も給料も丸々もらえるよう希望する人がほとんどです。私は社労士なので、賃金規定を作ることも仕事です。最低賃金法があるので、極端に給与を低くすることはできない。そこで出社日数を減らすことで対応することもあります」

“裏技”もある。

「私は行いませんが、給与を低くしてボーナスを増やせばいいというアドバイスをする社労士もいます」(同)

 保険料や年金額の計算に用いる「標準報酬月額相当額」は1年間の標準賞与額を12で割って計算する。支給1回につき、150万円が上限だ。ボーナスを500万円もらっていても、150万円として計算する。

「それで給与を20万円とか30万円程度にすれば在老のラインにかからずに済むこともあります。ただ、常識的に考えて普段の月収が低い人がそこまでボーナスをもらうのはおかしいので、年金事務所などに調査される可能性もあります」(同)

在老ラインの引き上げか廃止を検討

 目下検討されているのは、この在老のラインを現行の50万円から62万円や71万円に引き上げるか、制度自体を廃止する案だ。いずれの案でも関係のある高齢者にとってはプラスになるが、12月5日のNHKの報道によると、

〈政府・与党は制度の見直しによって収入が増える高齢者に対して、所得税がかかる際の控除額に上限を設けて一定の税負担を求める案を検討している〉

 ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏が言う。

「働きながら年金を得ている高齢者は、公的年金等控除と給与所得控除、ダブルで控除が使えるわけです。つまり、同じ年収でも、給与所得だけの人よりも手取り金額が増えてしまう。これを機に、そこを改めようということでしょう」

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