あなたの年金給付額はどうなる? 「サラリーマンが損をする」は本当? 年金制度改革で知らないと損をするポイント
自営業者や専業主婦が困窮する事態を避けるために……
“目標達成”のめどはついているのか?
「厚生年金では26年度、国民年金では57年度までマクロ経済スライドで抑制を続ければ、所得代替率を年金制度が持続可能なラインまで持っていける、というのがこれまでの予定でした」
北村氏はそう説明する。
「とはいえ、この予定でいくと国民年金は抑制の期間が長く、現状より3~4割も受給額が減ってしまうという試算が出ています。それだと、国民年金のみに加入している自営業の人や専業主婦などが困窮してしまいます。そうした事態を避けるため、厚生年金と国民年金の抑制終了時期を36年度で一致させようとしているのです」(同)
それにより、基礎年金の給付水準を3割底上げしよう、というのが今回の改革の主旨だ。しかし、基礎年金の抑制終了時期を21年も前倒しするためには何らかの措置が必要。具体的には、厚生年金の積立金の一部を基礎年金の給付に振り向ける案が検討されている。
「サラリーマンは損をする」は正しい?
年金は、主に現役世代が支払う保険料で高齢者世代への支給を賄う「賦課方式」が取られており、これまでに余った分は積立金として年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用。23年度の積立金は厚生年金が約243兆円、国民年金は約12兆円となっている。
「女性の社会進出や『106万円の壁』の撤廃などで、厚生年金の加入者は増加が続いていくと見込まれています。一方、国民年金は学生や低所得者など、納付できていない人も少なくない。実質納付率は4割程度です。財政的には厚生年金の方に余裕があるのは事実です」(北村氏)
とはいえ、厚生年金の積立金を国民年金の給付に充てれば、「なぜサラリーマンが自営業者を助けなければならないのか」との声が上がるのは当然である。
「そうした批判は一面ではあたっていると思います。しかし、国民年金は厚生年金加入者ももらうわけですから、トータルで損をする人はごく一部。それは厚労省も言っていますし、その通りなのです」(同)
「制度が崩壊する可能性」
社会保険労務士の井戸美枝氏は、
「調整期間が終われば、物価や賃金の上昇と同じように年金も上がっていきます。つまり、調整期間である36年までの年金受給者に影響があるということです。逆に調整期間終了後に年金を受給し始める人は目減りがなくなるわけで、実は今の若者にとって益のある話なのです」
と語る。一方、北村氏は年金制度の将来を懐疑的に見ている。
「今の基礎年金は満額で月6万8000円。かたや生活保護では単身者で月11万円程度もらうことができます。国民年金だけでは暮らせない人が生活保護を選択するようになれば、国の支出はさらに増えていきます。せめて生活保護の支給金額くらいには基礎年金を上げないと不公平ですし、年金制度自体が崩壊する可能性すらはらんでいます」
後編【「年金で豊かな生活が送れるとは思わない方がいい」「年金カットを避ける“裏ワザ”は」 制度改革であなたの年金給付額はどうなる?】では、年金カットを避ける裏ワザや、繰り上げ給付と繰り下げ給付ではどちらがお勧めなのか、という点などについて詳しく紹介している。
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